2016年頃から、全国の大学で「地方創生」や「地域活性化」を学ぶ学部が開設されるようになりました。また、高校生が地域と関わるような取り組みも行われています。今回は【学生時代に学ぶ「地方創生」「地域活性化」】について考えます。
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学生時代に地方創生・地域活性化を勉強する

「地域活性化に関わった」という学生から聞かれる話と言えば…
- 授業で地域の人とワークショップをした
- 地域のお祭りを手伝った
こうした学生が、関わった地域に愛着を持ち、定期的に通ったり、定住したりして、学生時代に勉強したことを地域に還元してくれればいいのですが、そうした例はほとんど聞かれません。

かくいう私も、大学時代はいわゆる「地域活性化」の勉強をしており、3年生の時、授業の一環で兵庫県の離島・家島を訪れて、島の観光や人口について調査したことがありました。

これをきっかけに、離島振興イベント「アイランダー」で、家島ブースのお手伝いをさせていただくことに。他の島のブースにも、お手伝いの大学生が多くいました。

そうした学生は、島の生まれでも育ちでもなく、島とのつながりで参加している場合がほとんど。島側としては、東京へ派遣する人手を抑える(経費節約)ため、東京にいる人にお手伝いをお願いしたいという意向があります。

しかし、大学を卒業した途端、彼らはお手伝いを止めてしまいます。仕事でも、田舎を旅していても、ネットでもSNSでも、地域活性化のようなことに本気で取り組んでいる(稼いでいる)20代の方と出会うことは少ないです。

学生時代の「地域活性化」は、携わった学生にとっての楽しかった思い出であったり、就活で話すネタのひとつとなっています。こうした状況で、果たして学生時代に地方創生や地域活性化を勉強する意味はあるのでしょうか。
私が地域活性化に興味を持ったきっかけ
私が初めて地方の人口減少や高齢化に直面したのは2013年の夏。浪人中に訪れた高知県の離島「沖の島」での出来事がきっかけです。

島から帰る船のデッキで、偶然同じ空間に居合わせたおじちゃんから、沖の島の隣に浮かぶ「鵜来島」が、人口減少・高齢化で無人島になるかもしれないという話を聞きました。
★2018年 鵜来島旅行記★

日本には400以上の有人島があります。島ごとに異なる景色や文化を、色んな人に楽しんでもらえないのはもったいない!と思い、大学では観光やまちづくりを勉強することを決断。

無事試験に合格し、私が大学に入学した2014年、ちょうど安倍首相によって「地方創生」という言葉が発表されました。
勉強する意味あるの?
日本全国の島がアイランダーに出展する目的は「島のPR」。

土日の2日間で、毎年1万人以上が訪れるこのイベントで、まずは島の名前だけでも知ってもらいたいという島が多く、ブースでは特産品の販売やパンフレット配布、移住相談などが行われます。

しかし現実は、特産品があまり売れず、高額のブースの出展料・人件費・交通費・物品の送料などにより、赤字の島が多いです。私も家島ブースのお手伝いで「特産品を完売させる」、つまり「モノを売る」というミッションが与えられていました。

どれだけ地域活性化の勉強をしていても、モノを売るための手法を学ぶことは出来ません。さらに、モノを売るためには、売り場に「人を呼び込む」ための作戦も必要です。
★参考:モノを売ることは出来ますか?★
お金と人の流れは勉強すべき
例えば、人口20人の鵜来島は『釣り』のメッカとして有名ですが、島でどれだけ魚が獲れても、島にいる人に売れる魚の数には限りがあります。

島外に売るとしたらどこで売るのか、北海道の魚と並んだ時の強みは何かなど、売り方を考えなければなりません。「釣りのメッカ」を前面に押し出して、島に人を呼ぶとしたら、広告やウェブサイトのデザインなども重要です。

広告やウェブサイトを作る予算はどこから来るのか… 地域で何か新しいことを始める際には、国や自治体から出ている公募事業へ応募し、補助金を利用するのが一般的です。

しかしもちろん、適当に名前を書いて応募すれば貰えるわけではなく、アイデアを元に様々な資料を作らなければなりません。そうした資料では通常、写真や図を使うことが出来ず、文字だけで企画内容を綴る必要があるため、文章を書くスキルも必要です。

書類選考を通過したら、プレゼンのためのパワポ資料を作成しなければならず、さらには収支計画を立てるために会計も…といった感じ。仮に1年間の事業を受託したら、事業を遂行する傍らで、人脈づくりなど、次年度以降に繋がるような根回しも必要です。

島の名前を知ってもらうだけで、島に人が訪れることはありません。島の魅力を上手に語る話術や立ち回り、コミュニケーションスキルも重要です。

その中でも一番は「お金と人の流れ」の基礎知識だと思います。学校の地方創生や地域活性化でやるべきことは事例研究やフィールドワークではありません。経済学や経営学を学んだうえで、地域活性化に生かしていくことが重要です。

とにかく、皆で一緒に何かをやった達成感や、「楽しかった感」だけが残るような取り組みだけでは、地域活性化になりません。この意識があるだけで、学生時代の勉強の質も上がると思います。
地域活性化のスタンスを決める
一方で、若者が地域活動に参加してみたいと思っても、「参加の仕方が分からない」という調査結果が出ています。

おすすめはまず「面白そう」「行ってみたい」と思った地域の勉強をすることです。歴史や人口、産業など、様々な勉強をする中で、地域活性化のスタンス(自分が関わりたい領域)を決めていきます。

私が考えていた地域活性化のスタンスは「観光による地域活性化」。観光は人もお金も動きます。また、旅行を通じて地域を好きになった人が、やがて移住するかもしれません。実際に東京圏出身の人が、地方暮らしを意識したきっかけのトップは「旅行」です。

なお、本音では誰も変化(地域活性化)を望んでいないことを理解しなければなりません。今の居心地がいいから、多くの人はその場所に住んでいます。そのため、自分のやりたいことよりも、地域に求められていることに取り組むのがベストです。
地域にとってのメリットは?

学生を受け入れる際、例えば地域の人に「体験料」などのお金が支払われることはありません。それでもせっかく若い人が来てくれるならと、とっておきのおもてなしで迎えてくれるのが日本の田舎です。

地域の人から課題などを聞いて、ちょっと手伝いをして、夜は地元の人とお酒を飲んで… 大学生の地域活性化はこんなのばっかり。学生も授業の一環なので、一生懸命取り組んでくれるのがまた厄介です(笑)自発的かつ継続的に関わってくれたらいいのですが…

お手伝いを頑張って、地域の人にも優しくしてもらった学生は「地域活性化に関わった」という達成感を味わえるしれませんが、地域にとってメリットがありません。今一度「地域活性化」「地方創生」の勉強や授業について考えてみてはいかが。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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