父島の居酒屋でウミガメを食べる!小笠原諸島とアオウミガメの歴史|2016 小笠原旅行記5

島旅

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今回は【初めての小笠原諸島旅行記】その5をお届けします。

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小笠原諸島はアオウミガメの日本一の繁殖地

小笠原諸島・父島上陸初日、ノープランで行く当てもなくやって来たのは、港から歩いて約30分の場所にある小笠原海洋センター。島民やリピーターからは「カメセンター」の愛称で親しまれている施設です。

2023年撮影

ここではウミガメの保護・飼育・展示が行われており、無料で見学することが出来る他、ウミガメへの餌やりやウミガメとの記念撮影等、様々な体験プログラムも用意されています。

海洋センターにて

小笠原諸島は絶滅危惧種・アオウミガメの日本一の繁殖地。毎年5月下旬から7月上旬にかけて、多くのウミガメが産卵のために上陸します。父島島内でアオウミガメの産卵が確認されている海岸は20か所もあるそうです(2023年現在)。

この日は夜に子ガメの放流体験が行われるとのことで、その場で申込み。参加費1,500円というなかなかお得な体験です。

子ガメの放流体験に参加

ということで19時、原付で子ガメの放流体験の集合場所・コペペ海岸にやって来ました。

街灯もなく真っ暗な中、しばらく1人で待っていましたが、ぼちぼち人も集まり体験がスタート。バケツに入っているのは、卵から孵化して数か月経ったアオウミガメです。

小笠原ではウミガメが生んだ卵を人工で孵化・飼育し、5000分の1とも言われる子ガメの生存確率を高めるための取り組みが行われています。海洋センターを運営するELNAのブログによると、2020年度は約55,000匹の子ガメたちが小笠原から青海原へ旅立ったそうです。

小笠原の砂浜に立てられている3本の枝は、「この下にウミガメの卵があります」というサイン。ウミガメが産卵をする時期は、スタッフの方が各砂浜の産卵状況を毎日チェック・管理しているそうです。

この日は体験の参加者に対して子ガメの数が多かったので、1人2匹の子ガメを手に持ちます。明かりを付けることが出来るのはここまで。真っ暗な中で子ガメは私の手を離れると、あっという間に海へ行ってしまいました。

子ガメには「明るい方向」を目指して進む習性があります。月や星が出ていると、真っ暗な砂浜でも海は明るいため、卵から孵化した子ガメは真っすぐ海へ向かうことが出来るのです。しかし、海よりも明るい光(=人工の明かり)があると、その明かりへ向かってしまいます。

■ 参考:ウミガメ観察のルール

おがさわら丸の船内にて(2023年)

実際、父島・メインストリート沿いにある大村海岸で生まれた子ガメが、光につられて集落の中へ入ってきてしまうこともあるそうです。

海洋センター内の孵化場(2023年)

そのため、大村海岸に産卵されたアオウミガメの卵は海洋センター内の孵化場へ移され、人工で孵化が行われています。子ガメの放流体験は、海洋センターで生まれたアオウミガメを海へ還す取り組みの一部なのです。

2023年撮影

こちらは大村海岸で出会った産卵中のアオウミガメ。ちょうど海洋センターのスタッフの方が海岸をパトロール中で、産卵の様子を見せていただけました。よく見ると、カメさんの右足に「8」と書かれた黄色いタグが付いています。これも海洋センターを運営するELNAによる標識放流調査によるものです。

小笠原村ビジターセンターにて

小笠原で生まれた子ガメは約1年かけて黒潮が流れる海域まで移動。海藻などを食べながら成長し、15年~30年後に再び小笠原に戻って来ると言われています。そして、大人になった雌のアオウミガメはおよそ4年間隔で小笠原を訪れるそうです。

また、ELNAによる標識放流調査で、父島に上陸した個体が2週間後に宮崎県沖で再捕獲されたことから、大人のアオウミガメが1日平均80kmの距離を泳ぐことも分かっています。

そんな小笠原で小学校の卒業式に歌われるのが【アオウミガメのたび】。子供たちが大きくなって島に帰って来てほしいという願いを込めた、ウミガメの島ならではの歌です。

小笠原とウミガメの歴史

海洋センターに展示されていたウミガメスープのいろいろ

一方、小笠原にはウミガメを食べる文化があり、先進国では日本が唯一、合法的にウミガメの捕獲が行われている国です(赤道周辺の島々やアフリカでは今もウミガメを食べているらしい)。

お土産のウミガメ加工品たち

植民地拡大や捕鯨活動で、欧米の船が太平洋を行き来していた時代、ウミガメは貴重な食料として捕獲され始めました。父島へやって来たペリーの艦隊も、1854 年に60 頭のアオウミガメを下田に運び、大いに賞味したという記録があるそうです。

アオウミガメの飼養場 二見港の一角にあったらしい(小笠原村ビジターセンターにて)

小笠原が日本の領土となってからもウミガメの捕獲は奨励され、最盛期は年間3,000頭以上を捕獲。1898年には海亀捕獲組合も結成されました。

小笠原村ビジターセンターにて

しかし、1910年に捕獲頭数が500頭を下回ったため、1913年から農商務省を中心に、世界に先駆けウミガメの人工孵化・放流事業が始まったのです。

小笠原では、現在でも年間135頭の捕獲が認められている一方で、ウミガメの保護・観察・調査により、その数を増やすことにも成功しています(=食べながら増やす)。なお、東京都漁業調整規則は以下の通り。

  • 禁漁期(6月~7月の産卵ピーク時)
  • 東京都知事による許可を持つ漁業者のみ
  • 捕獲頭数制限(135頭)※文書での記載はなく、水産庁からの口頭指示によるもの
  • 体長75cm以上
  • 産卵された卵の採取禁止

産卵数の増加傾向は保護の結果ではなく、アメリカが小笠原を統治していた時代にあまり捕獲されなかったことも影響しているようです。ウミガメの保全について、現在の取り組みが正しいことなのか、正解が分かるのは30年~40年後。今はまだ試行錯誤(実験)の段階なのです。

アオウミガメの捕獲方法

アオウミガメを食べるには、まず捕獲しなければなりません。海洋センターにはウミガメの捕獲方法についての資料も置かれていました。

小笠原におけるウミガメの捕獲方法は素潜り!交尾中のアオウミガメを狙って、メスガメ→オスガメの順に銛を突くそうです。

仕留めたウミガメ2頭は船の縁に括り付けられ、港まで運ばれます。

こちらが水揚げの様子。

そして解体された後、島の飲食店などに「亀肉」として供給されています。ちなみに、「アオウミガメ」の名前は、脂肪部分が緑がかっていることが由来のようです。

父島の居酒屋でウミガメを食べる

ということで、新亀の入荷シーズンに父島の居酒屋を訪れてみました(2023年7月)。

早速「新亀入荷しました!」というPOPを発見。こちらのお店では食事としての提供だけでなく、海亀煮込み用生肉も販売しているようです。恐らくこうした亀肉を買うのは、食事を提供している島内の宿泊事業者ですが、観光客がお土産に買って帰ることも出来ます。

父島で亀料理を提供しているお店は複数ありますが、おがさわら丸の入港中は賑わっているお店が多いため、確実に食べたい場合は予約しておくのがおすすめです。

今回は運よく席が空いていたお店で「亀刺し」を頂きました。ウミガメは海洋に生息する数少ない爬虫類。食感はお魚の刺身とは異なり、どちらかというと「生肉」という感じですが、臭みは全くありません。

刺身だけではあまり味もしませんが、個人的には米・大葉・ショウガ・醤油と一緒に食べるのが美味しかったです。日本で小笠原諸島(父島)だけ出来る体験を楽しむことが出来ました。

■ 参考:沖縄でイルカを食べてみた

なお、新亀のシーズン(=産卵シーズン)には、東京・竹芝桟橋のお土産屋さんにも「亀煮」が販売されています。アオウミガメを食べてみたい方はこちらもおすすめです。

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今回はここまで。本日もありがとうございました。

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