コーヒーベルトとは何か?コーヒー栽培に必要な地理学的条件|観光アイデア教科書 vol.18

沖縄コーヒー

私たちが普段飲んでいるコーヒーの多くは、コーヒーベルト地域で生産された、外国産のコーヒー豆が使用されています。日本国内でも沖縄・小笠原諸島・徳之島など、一部の地域でコーヒー栽培が行われていますが、生産量が少ないこともあり、その実態についてはほとんど知られていません。そこで今回は、コーヒー栽培に必要な条件を地理学的な視点から解説します。

■ 参考:沖縄のコーヒー農園の様子

コーヒーベルトとは何か

コーヒーの生育には、主に降水量・日当たり・温度・土質という4つの条件が必要です。これらの条件を満たす地域は、赤道を挟んで【北緯25度から南緯25度】まで、または【南回帰線と北回帰線】の間と考えられており、この一帯を「コーヒーベルト」と呼びます。

沖縄にあるコーヒーの森

コーヒーの生育に適した地域に偏りが生じる理由を考えるためには、まず地球の動きや大気の循環について理解しなければなりません。

コーヒー栽培に必要な地理学的条件

地球は太陽の周囲を1年かけて1周します(=公転)。

公転と同時に、地球自体も1日で1回転(=自転)しています。その回転軸は23.4度傾いているため、時期と地域によって太陽光の量(=日射量)は変わりますが、年間を通じて日射量の多い地域が赤道周辺です。

夏至の頃は赤道よりも北の地域、冬至の頃は赤道よりも南の地域で日射量が多くなります。夏至の時期に日射量が多くなる地点を結んだ線を「北回帰線」、冬至の時期に日射量が多くなる地点を結んだ線を「南回帰線」と言い、その緯度は23度26分とされています【緯度・経度は度・分・秒で表す】。

■ 参考:地球の緯度と経度について

物体を同じ体積で比べた数値が密度(=重さ÷体積)です。重いものは「密度が大きい」、軽いものは「密度が小さい」と表されます。赤道から回帰線付近の気候を考える上で重要になるのが、空気と密度が持つ2つの性質です。

  • 温度が高くなる(温められる)と、空気は膨張する
  • 形が定まっていないもの(液体や気体)の場合、密度の小さいものが、密度の大きいものより上にいく

日射量の多い赤道付近で温められた空気は膨張し、体積が大きくなりますが、重さ(質量)は変わりません。そのため、空気は密度が小さくなり、やがて上昇します。これが上昇気流の仕組みです。上昇気流が発生するエリアでは雲が発生するため、雨が多くなります(低気圧)。

地上から高さ10~16kmまでの対流圏では、100m上昇するごとに気温が0.65度下がります。気温が下がるとともに膨張した空気は収縮。密度が高くなり、空気は重くなりますが、赤道~回帰線付近では絶えず上昇気流があるため、下降することが出来ません

そのため、重くなった空気は南北へ移動し、北緯・南緯30度付近でようやく下降するのです(=下降気流の発生)。空気は下降するにつれて膨張し、空気中の水分は水蒸気となるため、下降気流が発生する地域では雨が少なくなります(高気圧)。

地図上の赤い線が北緯・南緯30度の線

緯度30度~回帰線付近は、赤道付近で上昇した空気が下降するため、1年の大半は乾季。日本の九州など、海に近い地域では雨が降りますが、海から離れたアフリカ北部や中東、中国内陸部、オーストラリア、アルゼンチンなどは砂漠地帯が広がります。

一方、夏至や冬至の時期の緯度30度~回帰線付近は赤道並みの日射量となり、上昇気流が発生するため雨季となります。コーヒーの栽培に適した【雨季と乾季のある地域】は、このようにして形成されるのです。

昼夜の寒暖差と標高もポイント

コーヒーの生育条件には、昼夜の寒暖差も重要であるとされています。

作物は日中の光合成によって作り出された栄養(糖)を消費しながら、呼吸をしています。作物の呼吸は、気温が高いと活発に行われ、気温が低いと抑制されます。つまり、暖かい日中に光合成が盛んに行われ、夜に気温が下がると、作物が栄養を多く含んだ状態となるのです。

赤道付近の地域で、海から離れた内陸や標高の高い場所では、昼夜の寒暖差が大きくなります。これは「水」の影響を受けにくいからです。同じ条件で岩と水を熱すると、岩のほうが熱くなります。逆に同じ条件で冷却した場合も、岩の方が冷たくなることは想像が付くはず。岩は水よりも、熱の影響を受けやすいのです。

これを地球に置き換えると、太陽の光に熱せられた地面(岩)や海(水)が、空気を温めたり冷やしたりするため、海よりも地面の影響を受けやすい地域では、寒暖差が大きくなります。

コーヒー生産量が多い地域の気候と標高

コーヒー生産量が多い国のケッペンの気候区分は以下の通り。

ブラジルの3州はCfa気候ですが、緯度はちょうど南回帰線付近に位置しているため、雨季と乾季があります。Aw気候やCw気候も雨季と乾季がある気候帯です。インドネシアやコロンビアには、年間を通じて雨が降るAf気候の地域もありますが、コーヒー生産の中心は雨季と乾季があるAm気候地域であると考えられます。また、いずれの生産地も標高が高いため、昼夜の寒暖差が発生します。

■ 参考:ケッペンの気候区分について

日本でもコーヒーの栽培は行われていますが、雨季と乾季がある地域はありません。さらに、標高が高い地域では気温が低くなりすぎてしまい、コーヒーの天敵ともいえる「」が発生します。つまり、地理学的な視点から考えると、日本はコーヒー栽培に適していない地域なのです。

沖縄に咲くコーヒーの花

コーヒーの原産地はエチオピア。日本だけでなく、ブラジルやベトナムなど、現在のコーヒー生産地の大部分も、もともとコーヒー栽培が自生していた地域ではありません。今回はコーヒーの産地を地理的な側面からご紹介してきましたが、次回は世界史的な側面からご紹介します。

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今回はここまで。本日もありがとうございました。

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コメント

  1. 毛利景子 より:

    コーヒーと気候の関連について、体系的に説明してくださりありがとうございます。
    何度も読み返してみます〜!
    基礎知識が足りない私にはとっても役立つ内容でした!

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