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今回は兵庫県の離島「家島諸島 坊瀬島(姫路市)」に行ってきたので、その様子をご紹介します。
家島諸島・坊勢島(兵庫県)上陸
兵庫県の島と言えば「淡路島」が有名です。ただし、淡路島は本州・四国と橋で繋がっているため、離島振興法の対象地域ではありません。
地図をよく見ると、淡路島(兵庫県)と小豆島(香川県)の間に小さな島々が点在しています。こちらが今回の旅先「家島諸島」。全ての島が兵庫県姫路市に属しており、島へ渡る船が出ているのは姫路港です。
姫路港までは姫路駅からバスで行くのが一般的ですが、今回は山陽電鉄の飾磨駅から歩きました。姫路港からは家島諸島だけでなく、小豆島へ向かうフェリーも出ています。
40余りの島々からなる家島諸島のうち、人が住んでいるのは家島本島・坊勢島・男鹿島・西島の4島で、定期船で渡ることが出来るのもこの4島だけ。ただし西島へ渡るには、島にある「いえしま自然体験センター」の利用予約が必要です。
坊勢輝汽船の船に乗り姫路港を出港。途中に男鹿島を経由し、約35分で坊勢島に上陸しました。姫路港↔坊勢島・家島本島間は定期船が7時から20時過ぎまで、1時間に1本ペースで運航しているので便利です。
島の1周は約7km。レンタサイクルもありますが、ゆっくり歩いても半日かからずに周ることが出来ます。
月曜日から土曜日は姫路市のコミュニティバスも運行されており、1回100円で利用することが出来ます。今回私は坊勢島に4時間滞在し、島を歩いて観光しました。
島を歩いて観光
こちらは国勢調査を参考に作成した坊勢島の人口推移。2020年は約2,000人が島に暮らしていることが分かります。1周7kmほどの島にこれだけ人が住んでいると…
家と家の距離が近く密集しているため、細い道が多いです。
こうした島で重宝されるのが原付。港の駐輪場には原付がずらっと並び、そして皆さんノーヘルで原付を乗り回しており、まるで異国を思わせるような光景が見られます。
こちらは恐らくガソリンスタンド。よく見ると、写真中央にある冷蔵庫のようなものに「レギュラー」と書かかれており、周囲にあるドラム缶にガソリンが入っているものと思われます。
細い道を通ることが出来るように、救急車もミニサイズとなっていました。救急の場合は、この救急車と救急艇で本土の病院へ運ばれるそうです。ちなみに坊勢島の道路に信号はありません。
今回は利用していませんが、島内に商店や飲食店もあり、何より本土に近く船の便数も多いため、島暮らしならではの不便さはそれほど無さそうです。
この日はちょうど港でバザーが行われており、多くの人で賑わっていました。
バザーだけでなく、島のお祭りもあったようです。子供たちがお神輿を担いで歩く様子も見ることが出来ました。
そんな島の子供たちが通うのは坊勢小学校。坊勢中学校もあり、2022年度は小学校に97名、中学校に56名の生徒が在学しているそうです。
坊勢島の人口ピラミッドはこんな感じ。10代の人口は小中学校の生徒数よりも多く、高校生や大学生だけでなく、坊勢島に住みながら島外の学校に通っている小中学生もいることが伺えます。
ちょうど喉が渇いていたところにあった自動販売機。ここにお金を入れても、飲み物が出てくる気がしないので、別の自動販売機を利用することに。
こちらの自販機も1回目では飲み物が出てこず(笑)もう1度お金を投入して、ようやく飲み物をゲットすることが出来ました。
野良犬が歩く島
原付のくだりでもお伝えしましたが、この島に漂うのは「素朴な島の雰囲気」ではなく、どちらかといえば「異国情緒」です。家々が密集しているせいでしょうか。歩いているだけでも活気が感じられます。
こちらは道端に干されていた大根。
大根に続いて、道端の車では布団が干されていました(笑)
こちらは道端にあった掲示板の張り紙。カタカナ・縦書きで書かれた何だか不気味な文章と、坊勢区会からのコメントが掲載されています。カタカナの文章を訳すと以下の通り。
この頃イノシシが増えております。イヌよりイノシシの方より人間のことの方が大切なんじゃないれすか。イヌのことより我々のことに一生懸命になってほしい。イヌがいなくしたために、イノシシが増えてしまった。よく考えていれよな。
坊勢島にはイノシシが生息しており、「イノシシ出没注意」の看板も立っています。
カタカナのメッセージに書かれた「イヌ」とは「野良犬」のこと。野良猫は日本中どこにでもいて、今では『ネコの島』というようなPRをする島もありますが、野良犬がたくさん歩いている島は珍しいです。
私が歩いている時にも野良犬を何頭か見かけました。噛みついてくると危ないので、坊勢区会としても対策をしていたところ、こうしたメッセージが届いたようです。
確かに犬がいればイノシシは寄ってきませんが、その犬も飼いならされてはいないので、いつ人間を襲うか分かりません。日本の他の地域ではあまり聞いたことがない難しい問題です。
漁業が盛んな理由を調べてみた
ひと味違うこの島は「自然・魚・人情豊かな坊勢島」と紹介されていました。私もここまで島を歩いて見つけた発見を色々とご紹介しましたが、坊勢島の一番のポイントは魚、漁業です。
島へ到着すると大漁旗が出迎えてくれます。どうやら坊勢島が漁業の島となった背景には、「現金獲得手段が漁業しかなかった」ことがあるようです。
こちらは坊勢島の港に並ぶ漁船たち。その数は900隻にもなるそうです。1つの漁港あたりの漁船数は日本一と言われており、多種多様な漁船漁業が活発に営まれています。
家島諸島周辺の播磨灘は、美味しい魚が獲れるだけでなく、その魚を食べる人がたくさんいる京阪神地域に近いこともあり、古くから漁業が盛んな地域だったそうです。
港のそばにある岩山、通称「弁天島」には漁師の守護神とされる弁財天が祀られています。姫路市のホームページによると、昔、違法な漁をしていた父に対する抗議として、海へ身を投げた娘がおり、その際にこの岩山が出来たそうです。
その娘の心は「まるで弁天様のようだ」ということから、この岩山が弁天島と呼ばれるようになり、現在は「海神社」として鳥居が置かれています。
こちらは2017年の姫路市の魚種別漁獲量をまとめたグラフ。姫路市全体の統計なので、坊勢島以外で水揚げされた魚介類も含みますが、カタクチイワシやアジ、シラスの漁獲量が多いです。また、ノリやカキの養殖も行われています。
こちらは2020年度の国勢調査に基づく坊勢島の産業構成。島民のおよそ半数が漁業に従事していることが分かります。
漁業の島ということで、道端にも漁具がたくさん落ちていました。
港のそばにある恵美酒神社。833年以前の建立とされていますが、詳しいことは分かっていないそうです。小さな島にこれだけ立派な神社があるのも、漁業が儲かっているからでしょうか。島を歩いていても、立派な家が多かった印象を受けました。
家島の産業は採石と海運
景色の綺麗な場所へやって来ました。正面に見えている、白い山肌の島が男鹿島(たんがしま)。花崗岩の採石業で100年以上の歴史を持ち、関西空港や六甲アイランドの埋め立てにも島の石が利用されたそうです。
約4時間で坊勢島を歩いて1周しました。続いては第三坊勢渡船の船で家島本島へ渡り、この日はそのまま島に泊まります。
船には「与論行」と書かれた貨物がありました。本当に与論へ行く荷物なのか、シールが張られたままなのか… もし与論まで行くなら、一体何が運ばれているのでしょうか。
約10分で家島本島に到着。姫路からの船は島の北部・真浦港に着きますが、坊勢島からの船は島の南部・網手港に着くため、家々や商店などが集まる真浦港周辺まで歩きます。
山を越えて、真浦港の近くまでやって来ました。家島本島も坊勢島と同様、狭い場所に家が密集しており、2020年の国勢調査による人口は約2000人です。
これまでは家島本島の人口が坊勢島を上回っていましたが、家島本島の減少率が高いため、人口の差は年々縮小しています。
こちらは今から約20年前、2000年の国勢調査による家島本島の産業構成。高度経済成長期、家島は男鹿島での採石と、その石を運ぶ海運を中心に栄えました。2000年当時はまだ、鉱業や運輸業の従事者が多く、繁栄の余韻が続いていたことが伺えます。
ちなみに、こちらは私が上陸した家島本島・網手港の様子。まるで工場のような雰囲気です。
そしてこちらが2020年の国勢調査による家島の産業構成。鉱業や運輸業に従事している人の数は激減しています。公共工事が減り、石の需要が減り、島での仕事が無くなり(基幹産業の衰退)、若者がいなくなる… これが家島の状況のようです。
2000年と2020年の産業構成を比べた時、従事者数は減少している一方で、割合として増加しているのが漁業。漁業しかなかった坊勢島に対し、家島は採石・海運があったので、漁業が中心にはなりませんでした。ちなみに淡路島にも、玉ねぎに代表される農業がありました。
言い換えると、周辺の地域に漁業以外の産業があったことで、競争が発生せず、坊勢島は漁業を中心にすることが出来たのです。
生きている魚が泳いでいる水槽もあり、もし欲しい魚がいたら、その場で締めていただき、買うことが出来ます。
魚の干物も吊るされていました。
夜はいえしまコンシェルジュNさんの家に1泊。テーブルには島の魚が並び、豪華な夕食となりました。家島の魚は本当に美味しいです。
翌朝は船の時間まで、港の前にあるカフェへ。こちらでは、Nさんを中心に「週末島活」という取り組みが行われており、この日はたまたま新聞の取材もありました。家島諸島、アクセスも良く面白い島なので、ぜひ1度足を運んでみてください。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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