2020年現在、日本の人口は1億2千万人を超え、世界第11位の人口となっています。しかし今後は、少子化と急速な高齢化によって人口は減少。2050年にはその数が1億人を切ると言われています。
人口が急激に減少すると、1億2千万人が生活できるように整備されている現在のインフラが不要になります(例:空き家)。それと同時に、税収減や人手・人材不足によって、インフラの維持・管理も課題となってきます。
地方経済を維持するために、様々な取り組みが行われていますが、今回はオンラインサロン『田舎チャレンジャーラボ』による、地域活性化の取り組みをご紹介します。
※この取り組みは地方創生☆アイデアコンテスト2020で中国経済産業局局長賞を受賞しました。
そもそも地方創生とは何か
2014年9月、 第2次安倍改造内閣発足後の総理大臣記者会見で「地方創生」が発表されました。
内閣府によると、地方創生は「東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持すること」が目的とされています。

日本全体で人口が減少する一方、今後も東京圏への人口の流入は続くとみられています。東京圏では時間をかけて人口減少・高齢化対策が出来る一方で、その他の地域では急激な人口減少・高齢化によって、手の打ちようがなくなってしまう可能性が高いのです。
「高齢化」から、高齢者も減少する時代へ
日本の人口は今後も減少していくことが見込まれています。下の図は国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表した日本の将来推計人口(グラフは報告書P3より引用)です。現在は「高齢化」が課題となっていますが、今後は高齢者の人口も減少していくことも見込まれています。

東京圏への人口集中を抑制すると同時に、東京圏からその他の地域への人の移動を促すことで、地域を維持しながら、人口減少・高齢化の対策を進めていく必要があります。そのための様々な施策を地方創生といってもいいでしょう。
地方の人口減少と関係人口
合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子どもの数)は、1970年代前半以降、日本全体で年々低下しています。それと同時に、急速な高齢化が日本全体で進んでいきました。

上の図は2010年と2015年の国勢調査の結果からみた、都道府県ごとの人口増減率です。全国的に人口が減少している一方で、東京圏や愛知県・大阪府・福岡県では人口の増加も見られています。

こちらの図は2040年の推計人口からみた、都道府県ごとの人口の増減率です。2010年から2015年では、人口の増加がみられていた地域でも減少に転じており、今後は日本全体で人口減少が進んでいくことが分かります。

こちらは2040年の推計人口からみた、日本の人口の構成比です。どの地域に・どれくらいの人が、住んでいるかを表した図ですが、人口の多くはやはり東京圏や愛知県、大阪府、福岡県といった、大都市がある都道府県に集中しています。
地方創生の名の下、ここ数年各地で「移住・定住促進」など、様々な取り組みが行われていますが、これらの取り組みがうまく進んでいる地域は少ないです。
地域と多様に関わる人々「関係人口」
そこで注目されているのが「関係人口」という考え方です。総務省によると、関係人口は『移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉』と定義されています。

(図は総務省「関係人口ポータルサイト」より引用)
少しストーリーをつけて、関係人口についてご紹介します。
旅行でとある島を訪れたAさん。Aさんは2泊3日の島での滞在中、様々な魅力を発見し、島の人にもよくしてもらいました。すっかり島のファンになったAさんは、年に1度、島に通うようになりました。そしていつからか「この島に住みたい」と思うようになりました。

しかし、島に移住するのはなかなか勇気がいることです……
何か島のために出来ないかと、島の人に相談したAさんは、オンラインでのやり取りを通じて、年に1度の島の祭りに企画から携わることになりました。
という感じです。関係人口は「観光客以上、移住者未満」とも言われています。
若者の地方への関心は高い一方で
東京圏への人口集中が続く一方で、若い世代を中心に「地方」や「田舎」への関心は高まっています。2017年度に発表された国土交通白書では、三大都市圏に住む若者の4人に1人が「地方移住に関心がある」という報告もされています。
しかし、先に挙げたAさんのように、「自分が好きな地域に関わりたい」「移住してみたい」と思っても、相談できる相手や、地域に関わるきっかけはそれほど多くありません。

(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局『「地方への新しいひとの流れをつくる」現状と課題について』より)
地方移住を相談する窓口として、東京・有楽町にふるさと回帰支援センターという場所があります。こちらへの来訪者や問い合わせは、ここ数年で急激に増加しており、その関心の高さが伺えます。

また、地方自治体がブースを出し、移住の相談窓口を設けるようなイベントも開催されています。しかし、移住や地方との関わり方を考える過程では分からないことの連続。いつでも気軽に相談出来る場所が少ないのです。
地域に関わりたいと思っても…
もちろん、インターネットで情報を調べることも出来ますが、これらの情報は信ぴょう性に欠けていたり、ネガティブなものであったりすることが多いです。地域に直接足を運ぶにも、交通費や時間の負担が大きいと継続が難しくなります。

つまり『地域に関わりたいと思っても、どうすればいいか分からない人が多い』ことが、課題ではないでしょうか。
「移住」というと一大決心を固めるような、大きな挑戦に聞こえがちです。もっと気軽に地域を知る・関わることが出来るようにして、地域に触れる機会を増やすことが、関係人口や地方創生の取り組みの第一歩です。
そこで今、オンラインサロン「田舎チャレンジャーラボ」が行っている『オンラインによる関係人口創出』の取り組みに注目が集まっています。
田舎チャレンジャーラボとは
田舎チャレンジャーラボ(以下ラボ)とは、月額会費制のオンラインコミュニティ。「地方で頑張る人・頑張りたい人の夢を一歩、後押しする。」をテーマに2020年3月から活動しており、その注目度の高さから、毎月5人限定の入会申込みには問い合わせが絶えません。

ラボを主宰は神奈川県出身で、数年前までは東京の大手銀行に勤務していた “さかえる”さん。いつからか、東京の会議室で行われる「なんちゃって地方創生」に疑問を抱くようになり、大手銀行の “ド安定の生活” を捨て、2018年に山口県の周防大島町に移住されました。
現在はさかえるさんは、島の集落支援員として、地域住民の皆さんとコミュニケーションを取りながら、ひじき販売をはじめ様々な活動をしつつ、田舎暮らし・島暮らしの魅力を発信しています。

★さかえるさんのプロフィールはこちら★
Twitterで1万5千人以上のフォロワーを抱えるさかえるさんの呼びかけによって始まった田舎チャレンジャーラボ。2021年3月現在、メンバーは60名ほどおり、すでに地方で活躍していたり、これから地方に移住したいと考えていたりする方が所属しています。
もちろん、オンライン上のコミュニティなので住んでいる場所はもちろん、メンバー年齢や職業も皆さんばらばらです。
ラボでは、Discordというチャットアプリを使用し、ジャンルごとに設けられた掲示板への自由な書き込みや、メンバーによる音声配信が行われています。
ポイントは掲示板への書き込みやラジオを聴くことが出来るのがラボのメンバーだけということ。ラボ内では、地方暮らしの悩みや移住の相談、地域の課題、さらには仕事の依頼などを通じて、メンバー同士の交流が盛んに行われています。
↓田舎チャレンジャーラボへの入会は画像をクリック↓

田舎チャレンジャーラボが注目を集めている理由
関係人口の創出において、田舎チャレンジャーラボが注目されている理由は大きく3つあります。

その1. 地域で頑張る人たちが繋がる
これまでは地方、特に田舎に住んでいると、物理的な距離の遠さもあり、他の地域で頑張っている人たちとの出会いや交流の機会があまりありませんでした。
田舎チャレンジャーラボでは地域で頑張っている人たちによる、オンライン上での交流があり、そこでは情報や成功事例の共有、地域での取り組みの相談などが行われています。

地域での取り組みを進める上で出てくる課題は、本を読んでも、インターネットをみても答えが載っていないものばかり。他の地域において、現在進行形で活躍している仲間に相談することで、親身かつ、様々な視点からの助言がもらえるのです。
こうした「地域で頑張る人たちが繋がる」仕組みによって、各地域に相乗効果がもたらされることが期待されます。
また、地方移住者ならではの悩みを相談出来る場としても重宝されています。
その2. 地方に関心がある人と地域とを繋ぐプラットフォーム
ラボには、すでに「地域で活躍している人」だけでなく、現在は都市にいながらも「これから地方に行きたい」「地方や田舎に関心がある」というメンバーもいます。

ラボ内での交流を通じて、調べても出てこないような、リアルな地方・田舎暮らしの様子を垣間見ることが出来ます。また、都市から地方に移住して活躍しているメンバーも多いため、移住の相談をオンラインで手軽に聞くことが出来るのも、このラボならではの特徴です。
その3. 地域の人材不足を補う
例えば、地域のパンフレットを作るにしても、デザインや写真、イラストなど、専門のスキルを持った人材が必要になる場合があります。しかし、そうしたスキルを持った人が地域に居ないという場合も多いです。そこで活躍するのがラボのメンバーです。
ラボのメンバー案件をお願いすることで、仕事を通じて、地方に関心を持つ人に地域と関わるきっかけが提供されています。

さらに、これまでに「地方創生についてのオンライン講演会」や「オンライン移住フェア」など、オンラインのイベントでも、ラボのメンバーがフォロー役として活躍しています。

こうした仕組みは地域の人材不足を補うだけでなく、他の人に地域を知ってもらうきっかけにもなり、まさに関係人口が創出されているといってもいいでしょう。さらには、メンバー同士によるスキルアップの講座なども行われています。
オンラインから生まれる交流人口
田舎チャレンジャーラボから「新しい旅のカタチ」が生まれることも期待されています。それは『メンバーに会いに行く×地域の困りごとを解決する』ような旅です。今回は、ラボ主宰のさかえるさんが暮らす周防大島町での事例をご紹介します。
周防大島町について
周防大島は瀬戸内海に浮かぶ人口約17,000人の島。温暖な気候と豊かな自然、そして、ハワイ州カウアイ島と姉妹都市であるという背景から「瀬戸内のハワイ」とも言われ、年間100万人近い観光客が訪れています。

一方で周防大島町では急速に少子高齢化が進んでいます。周防大島町の人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は、全国にある市区町村のなかでトップ。人口の減少も山口県全体の統計と比べて、3倍以上のスピードで進んでいます。

☆周防大島旅行記☆
ラボメンバーが周防大島に集結
地域の担い手が不足する中、さかえるさんが行うのは周防大島での『ラボ合宿』です。普段は全国に点在しながら、オンラインで交流するラボメンバーが周防大島に集結。メンバー同士はもちろん、島の方とも交流を深めながら、4泊5日の島暮らしを体験するという内容です。

合宿では、地域の課題を解決するような体験プログラムを通じて、島の文化や生活を学びます。さらに、具体的に島暮らしを体験するため、地域での仕事の生み出し方についても、外部講師を招聘しながら考えます。

島に暮らすさかえるさんが、予め島での諸々を調整してくれているので、初めて島を訪れるメンバーも、スムーズに地域に入っていくことが出来ます。
オンラインが作る「会う」ことの価値
ラボ合宿は4泊5日で約5万円で定員は約20名。メンバーの主な宿泊先は、2020年春の大雨で壊滅的な被害を受けたキャンプ場です。宿泊費や体験費、飲食費などで地域に経済的な効果もあります。

年間100万人の観光客が訪れるといわれる周防大島で、観光客が多く訪れるのは、GWがある5月と夏休みの8月。こうした時期はレジャー目的で来訪する観光客がメインとなりますが、ラボ合宿の場合、目的がレジャーとは異なるため、閑散期にも集客が可能です。
★オンラインゲストハウス「田舎チャレンジャー宿」★
また、プログラムを作っても、集客で苦戦する地域が多いですが、集客もオンラインサロンならではの強みです。
一般的に地域のイベントは、開催日時や内容が全て決まってからリリースされますが、オンラインサロンがメンバー向けにイベントを開催する場合、メンバー間で日時や内容を予め調整することが出来るのです。そのため、集客に失敗するリスクが低く、広告宣伝費も不要です。

今回のようなラボの合宿が、周防大島にとってメリットがあるのは明らかですが、一見すると「参加して何が楽しいのか」と思うかもしれません。ポイントは『メンバー間はオンラインで予め関係を深めている』という点です。
島暮らしを体験出来るという、プログラムの中身の要素もありますが、ラボのメンバーに「会いに行く」という楽しみがあります。

ラボ合宿に参加するメンバーは「地方・田舎で頑張りたい」という共通のキーワードによってサロンで出会った人たち。オンライン上の交流を通じて、お互いを知り合っているという関係があるため、直接「会う」ことに価値(貴重性)が生じているのです。
まとめ
地方創生において注目されている関係人口。地方に関心がある人が、手軽に地域を知る・関わる窓口として『オンラインサロン』は重要な役割を果たします。

その先行事例として、今回は田舎チャレンジャーラボをご紹介しました。ラボではオンライン上での交流や仕事を通じて、地方に関心がある人々の繋がりが育まれ、関係人口が生み出されています。
オンラインでの交流を深めた先には、直接「会う」ことに価値が生み出されます。サロン(コミュニティ)イベントなどによって、オンラインを超えた交流人口をも生み出せる可能性があるのです。
地域のファンクラブなどもありますが、これからはファン同士の横のつながりを強くするような運営やプログラムが出来ると、より強い地域の関係人口を作ることが出来るはずです。
コメント