地方創生の課題は仕事以外にもある 本当に必要な解決策は何か|観光アイデア教科書Vol.18

観光アイデアノート

中山間地域の人口減少や高齢化については、長きにわたって様々な取り組みが行われています。しかし、中山間地域に限らず、日本全国の人口減少と高齢化は止まる見込みがありません。そこで今回は、地方創生や田舎の活性化を進める上で「本当に必要なこと」を考えます。

※ この取り組みは地方創生☆アイデアコンテスト2021で中国経済産業局局長賞を受賞し、当賞受賞は2年連続となりました。

★参考:2020年の受賞内容★

人口が都市に集中する仕組みと仕事

これまで、地方の人口減少・高齢化に対する取り組みは、人口が集中している都市からの、移住・定住の促進が中心でした。最近では「関係人口」という、都市に住みながら地方と関わるという方法も実践されています。

そもそも「都市」はどのようにして興るのでしょうか。日本では基本的に自給自足生活が出来ません。明治政府による地租改正(1873年)以降、貨幣による納税が求められ、人々は現金収入が必要となりました。

あなたが絶品の魚が獲れる無人島で暮らしていると仮定します。現金収入を得るため、絶品の魚がどれだけ獲ったとしても、無人島内には買ってくれる人がいません。住んでいる人がいたとしても、皆さん自分たちでその魚を獲って食べていたら売れません。つまり、モノを売るのに必要なのは、美味しさや質よりも、まずは買ってくれる人がいるということです。

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物流の仕組みや、インターネットがない時代は、魚を売って収入を得るため、無人島から人がいる対岸へ移動する必要がありました。こうして人がいる場所には、モノとそれを売る人が集まるようになります。そこからさらに、人手が必要な工場や、モノを売るお店も集結し、やがて便利な都市となるのです。

働く場所(雇用)があって、しかも便利な街には、さらに人が集まるようになります。その結果が都市への人口集中です。実際に、2020年の国勢調査の結果を見ると、もともと人口が多い都市で人口増加数が多くなっていることが分かります。

RESASを見ても、今後も日本全体で人口減少が進む一方で、東京への一極集中は続くことが分かります。その一方で、若い世代を中心に、地方移住への関心は高まっていると言われています。

地方移住というと「一大決心」というような、人生のビックイベント感がありますが、実際はそうでもありません。私自身、24歳で埼玉から沖縄に移住しており、それほどハードなことではないと感じています。誰でも出来ます。

しかし、関心が高まっていると言われる割に、実際に都会から地方へ移住する人はまだまだレアです。

★参考:沖縄移住って特別なこと?★

その理由として「仕事への不安」が大きいことが、様々な調査結果から分かっています。繰り返しになりますが、人がいるところには様々な仕事があり、特に東京は仕事(求人)の数・種類とも多いです。私も大学時代、派遣で本当に色々なバイトを経験しました。

有効求人倍率をみると、地方にも仕事(求人)はあり、むしろ人手が不足している場所も多いことが分かります。つまり、地方(田舎)にも仕事はあるのに、移住の不安材料が仕事になっているという矛盾が起きているのです。

もちろん地方に仕事があるといっても、都会に比べて求人の数や種類が少なかったり、給与低かったりということは調べなくても明らか。多くの人にとって、「仕事への不安」が、地方への興味を上回っている状態と言えるでしょう。

会社に頼らずモノを売ることが出来る

しかしこの不安は、仕事というよりも、あくまで地方の会社が出している求人情報に対する不安であると考えられます。

会社に属して働くことだけが「仕事」ではありません。

インターネットがない時代、現金収入を得るためには、人がいる場所でモノを売る必要がありました。現代において、モノを売るのに必要なのは、人の数よりも「電波」です。電波さえあれば、無人島に住んでいても、島で獲れる絶品の魚を世界中に売ることが出来て、現金収入を得ることが出来ます。

ネットでモノを売ることは誰でも出来ますが、出品したものを消費者に買ってもらうためには、何らかの形で信用が必要です。「絶品の魚」として販売しても、その情報が本当なのか、消費者に信じてもらえなければ売れません。

★参考:メッシのスパイクを売ることは出来るか★

消費者に商品を信用してもらうための方法が、これまでは企業のブランドを利用することでしたが、最近はSNSなどの情報発信です。モノが出来る過程や生産の様子など、こまめに情報を届けることで、フォロワーが増え信用に繋がります。

これは個人でも出来ることです。

山口県周防大島町と橋で繋がった「沖家室島」で獲れるひじきがあります。インターネットを使ったEC販売が中心ですが、テレビやネットで話題になり、注目を集めています。

★沖家室ひじき★

沖家室ひじき|国内最高級・山口県周防大島産
漁期序盤のたった1日分。最高の新芽ひじきのみを刈りました。「沖家室ひじき」は全ての工程を漁師自身の手作業で、真心こめて商品化した、国内最高級のひじきです。

これもインターネットがなければ、店舗にひじきを持っていく必要があり、生産者の方の手間が増えます。持っていく場所も戦略を練らなければ売れません。そもそもお店の棚に商品を並べてもらうための事前の交渉なども必要です。

SNSなどで生産過程を公開することで、いざ販売となれば、全国から島のひじきを購入する人たちがいます。場所関係なく、会社のブランドも借りず、モノを売ることは出来る時代なのです。

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今言われている「地方・田舎の仕事」は、あくまで「会社の求人情報」であって、会社に頼らずモノを売って稼ぐことも立派な仕事です。そう考えると、地方・田舎の仕事の幅は広がります。

どうすればいいか分からないから不安

しかし、こうしたことをいくら語っても、なかなか人は動かないでしょう。私自身、沖縄では組織に属しており、「個人でモノを売れ」といわれても、すぐには無理です。何をどこに売ればいいかも分かりません。

地方に関心があっても、移住にまで至らない理由の核心は恐らくここです。不安材料とされる「仕事」はあるとしても、どうすればいいか分からず本当に地方や田舎で生きていけるのかが、皆さん不安なのです。その感覚がアンケートの選択肢になく、言語化も難しいので、分かりやすい「仕事」が不安要素として挙げられていると思われます。

だからこそ、先ほども述べたように、地方移住に「一大決心感」が伴います。「覚悟を決める」といってもいいでしょう。そうした意思決定をするには考える時間も必要で、結局「興味はあるけど難しい」となってしまう人が多いのです。

政策を作っている偉い方たちの多くは、実際に都会から地方に移住(Iターン)したことがないので、こうした感覚はいまいち掴みにくいはず。

先ほども述べましたが、若くして都会から地方へ移住する人はまだまだレアな存在です。地方の若い人も都会へ出てしまいます。そのため、今の時代の若い人が地方や田舎で過ごしたら、どのような人生が待っているのか、非常に見えにくくなっています。

いわば、仕事よりも、生き方のロールモデル(=夢や目標の幅)が少ない状態。地元でやりたいことがないから、とりあえず都会に出るというのは、まさにこの状態から発生する動きです。

ということで、地方創生のアイデアとして必要なことは、「地方(田舎)での生き方・暮らし方を知る」ということ!

日本は人口が減少していると言われがちですが、長いスパンで見ると、人口は「元に戻る」というのが適切な表現である」ことが分かります。そして、人口が元に戻るのであれば、人口が少なかった時代の生き方・暮らし方が、今後の参考になるはずです。

もともと日本人は多くが個人事業主で、複数の生業を掛け合わせて生活をしていました。「就職・転職活動」という言葉があるように、今では会社に属することが当たり前のようになっていますが、そもそも日本初の株式会社が出来たのは明治初期。日本の会社の歴史は150年余で、終身雇用も戦後に普及した制度です。

日本は海外に比べ、自営業選好度が低いです。会社に入ることが当たり前になっているので、地方の仕事も「求人情報」ばかりで、いい仕事がないと言われがちです。

人口が少なかった頃を参考にするといっても、昔と今では高齢化率が大きく異なります。そこで「人口が元に戻りつつある」かつ「高齢化率が高い」地域の例をご紹介します。

先ほど「ひじき」をご紹介した山口県の周防大島町は、人口1万人以上の市町村で高齢化率が最も高く(2015年)、人口も右肩下がす。島の就業形態を見ると、やはり個人や家族で事業を営んでいる人が多いことが分かります(かつ一次産業従事者が多い)。

これからの日本では、働き方や生き方も「個人事業主(会社に頼らない人)」という選択肢が必要です。周防大島に限らず、日本の田舎は元気な高齢の方が多く、会社員を引退してからすでに個人事業主として働いていて、税金を納めている方が多くいます。

そして繰り返しになりますが、地方には仕事があって、「これから個人事業主の時代に戻る」といわれても、多くの人が知りたいのは「じゃあどうすればいいの?」「本当に生きていけるの?」という部分です。

心理面の整備が不十分

これまで各地で様々な移住・定住政策が行われ、仕事(会社の求人)や子育て、家など、生活をする上での環境面の整備は行われてきました。

しかし、ここまでご紹介してきたような、移住者希望者が持つ本当の不安(心理面)に対する対策が行われている事例はほとんどありません。また、こうした心理面での不安は、移住前だけでなく、移住後にも付きまとうものです。

行政の方は地元出身が多いので、事前にそうした不安を察知して、対策を打つのは難しいことが考えられます。例えばこれからは、都会から地方に移住した人が「親の介護をどうするのか」という問題も出てくるはずです。そこに対する対策が事前にあれば、ひとつ不安を解消することが出来ます。

★参考:沖縄移住も孤独との闘い★

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心理面の対策として、移住者へのインタビュー記事などはよく紹介されています。そこには大抵「知り合いに相談して…」「とんとん拍子で…」といったようなフレーズが登場します。

移住希望者としては、『どうやってその知り合いと出会ったのか』『とんとん拍子って、なんでそんな風に話し進むのか?』『で、いくらかかったの?』などの、ひとつずつ詳細が知りたいの(はず)です。少なくとも私はそうです。逆にそうしたインタビュー記事を読んで、「この人は運がいいからだ」「自分にはコネがないから無理だ」と、諦めてしまう人も一定数いるはずです。

田舎チャレンジャーラボが解決する課題

「生き方のロールモデルがない」「不安」というような課題を解決する、ひとつの方法がオンライン上のコミュニティです。

田舎チャレンジャーラボ】では、全国に点在するメンバーと、お互いの地方(田舎)暮らしの状況を共有することが出来ます。ラボには様々な生き方のモデルがあり、地方移住を考えている人、または地方や田舎に暮している人にとっても参考になります。オンラインなので、「不安」なことは、いつでもメンバーへ気軽に相談することが出来ます。

田舎チャレンジャーラボを立ち上げたのは、周防大島でひじき漁を営むさかえる氏。生まれも育ちも神奈川県で、大手銀行員からひじき漁師へ転身した経歴の持ち主です。

★さかえる氏のホームページ★

ど安定捨てて島移住
複業、資産運用、地方移住で人生をもっと豊かに

日々のやりとりの中で、今メンバーがどういう状況であるかを知ることが出来ます。SNSとは異なり、やりとりは会員のメンバーしか見ることが出来ないので、その内容も超リアルです。

例えば「都会に疲れました。田舎で暮らしていきたいです。」と相談するだけでも、何から始めればいいのか、皆さん自分の経験談に基づいて、アドバイスをしてくれます。ちなみにこの質問に対しては、「とりあえず休むべし」「田舎ものんびり出来ないし疲れるよ」という回答が返ってくると予想されます(笑)

移住までの相談だけでなく、移住後にも、田舎暮らしや人生のお悩みを共有することが出来ます。

また、個人事業主のメンバーも多いので、メンバー間でスキルを共有して、仕事が発生することもあります。

まとめ

地方(田舎)にも仕事はあるにも関わらず、仕事が不安で移住しない人が多いという矛盾の背景には、本当の課題が「仕事」以外の部分にあります

仕事への不安は「求人情報」への不安であり、個人事業主など、会社に頼らない形での仕事もあります。

で、どうすればいいの?
本当に生きていけるの(生活できる=仕事あるの)?

という、地方移住に対する漠然とした不安に対する対策が、地方創生や田舎の活性化を進める上で「本当に必要なこと」です。

今はオンラインで、全国の地方や田舎で暮らす仲間を参考にしたり、迷ったときに相談することが出来ます。これから移住してみたいという人も、現地やイベントに行かなくても、リアルな暮らしの様子を知ることが出来ます。

その一例として、実際に【田舎チャレンジャーラボ】というコミュニティがすでに存在し、本当に必要とされる地方創生へのチャレンジが行われています。

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