日本海以上?太平洋が荒れる理由~黒潮・季節風・台風の関係|観光アイデア教科書 vol.23

観光アイデアノート

冬の日本海と言えば「荒れている」というイメージを持っている人が多いはず。実際、日本海に浮かぶ孤島・舳倉島(石川県)へ渡る船の2020年1月の就航率は6.7%となっています。一方、夏の日本海は穏やかで、年間を通じて見ると、太平洋もなかなか荒れていることはあまり知られていません。

日本海以上?太平洋が荒れる理由

こちらは東京都港湾局の資料より、伊豆諸島に就航する貨客船・高速ジェット船の就航率をまとめた表。御蔵島と青ヶ島における通年の貨客船就航率は62%、利島のジェット船就航率は69%しかありません。

ちなみにこちらは、八丈島の底土港へ入港する橘丸。東海汽船が「欠航」の判断を下したときの海は、この動画以上の時化状態であることが伺えます。

東京・竹芝桟橋から南へ1000kmに位置する小笠原諸島。島へ渡る交通手段は定期船・おがさわら丸のみ。所要時間は24時間!天候にもよりますが、長い船旅の中で、おがさわら丸が最も揺れるのも八丈島付近を通過するときです。

おがさわら丸の船内に掲示されている黒潮の流れの予報

年間を通じて伊豆諸島近海が荒れている(=船が揺れる)背景には、「黒潮」があります。

年間を通じて黒潮の影響を受ける

口之島から見た黒潮

黒潮は日本の南岸を流れる海流(暖流/亜熱帯循環の一部)です。東シナ海を北上した後、トカラ列島・口之島付近から太平洋へ入り、房総半島沖を東に流れています。

■ 参考:黒潮が直撃する島・口之島

沖縄にて ジョン万次郎記念碑

幕末から明治初期にかけて活躍したジョン万次郎は、14歳の時に高知県から漁に出て遭難。数日後、青ヶ島の南に浮かぶ「鳥島」へ漂着しました。これはジョン万次郎が黒潮に流されたと言えるでしょう。

青ヶ島から見た海

海水の透明度が高く、海に入射した太陽光線がほとんど吸収され、黒っぽい藍色になることが「黒潮」という名前の由来。栄養分が少ない=プランクトンも少ない「海の砂漠」に、イワシやサバなどの回遊魚が生息することは、「黒潮パラドックス」として研究が進められています。

本州南岸を流れる黒潮には大きく分けて3種類の安定した流路のパターン(1:非大蛇行接岸流路/2:非大蛇行離岸流路/3:大蛇行流路)があります。なお、亜熱帯循環は主に貿易風・コリオリの力・偏西風によって引き起こされるため、地軸を傾けながら地球が自転・公転している限り止まることはなく、伊豆諸島は黒潮の影響を年中受けるのです。

御蔵島・青ヶ島・利島(ジェット船)の就航率が低いのは、西から東に流れる黒潮と、島に港がひとつしかないことが理由です。新島と式根島も港はひとつですが、新島は地内島が防波堤となっており、式根島は島の東に港があるため、黒潮の影響を受けにくいと考えられます。

もちろん父島へ向かうおがさわら丸の揺れに影響を与えるのも黒潮ですが、それだけではありません。2019年12月31日、私の乗船したおがさわら丸が最も揺れたのは、黒潮が通っていない伊豆大島付近を通過している時でした。

■ 参考:揺れるおがさわら丸に乗船

冬の季節風と夏の台風も影響

気象庁ホームページより

こちらは私が揺れるおがさわら丸に乗船した、2019年12月31日の天気図。伊豆大島付近にある前線と、西高東低の気圧配置が、風と波を引き起こしたのでしょう。冬の伊豆諸島近海は黒潮に加えて、西高東低の気圧配置によって季節風が吹いて海が荒れる傾向があります。

2019年12月における波高の推移を比べると、日本の南の海(=太平洋)は日本海と同じぐらい荒れています。それよりも荒れているのが、低気圧に近い日本の東の海です。

一方、こちらは2020年8月の波の様子。冬は荒れている日本の東の海を含め、全体的に穏やかですが、日本の南の海や東シナ海は台風の影響を受けて、猛烈な時化となる場合があります。

冬のさるびあ丸

伊豆諸島近海の太平洋は黒潮に加えて、夏は台風、冬は西高東低の気圧配置の影響を受けるため、年間を通じて見ると、日本海より荒れているかもしれないのです。

夏の日本海

日本海側にも対馬暖流が流れていますが、黒潮に比べると流量は約1/10、流速は約1/4しかありません。日本海が荒れるのは季節風の吹く冬の期間だけ。この穏やかな海を利用して開かれたのが、江戸時代終わりの「北前船」です。

冬はどんより曇り空が続く日本海側。この天気に荒れた海が映えるため、「冬の日本海は荒れている」というイメージが作られてきたのでしょう。冬の太平洋側は晴れていても荒れています。伊豆諸島・小笠原諸島を旅する時は、波予報をチェックしておくことがおすすめです。

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今回はここまで。本日もありがとうございました。

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