コーヒー栽培の条件を地理的に分析~ポイントは雨季・乾季と標高|観光アイデア教科書 Vol.26

沖縄コーヒー

私たちが普段飲んでいるコーヒーの多くは、外国産のコーヒー豆が使用されています。日本国内でも沖縄・小笠原諸島・徳之島など、一部の地域でコーヒー栽培が行われていますが、生産量が少ないこともあり、国産コーヒーはほとんど知られていません

★参考:沖縄のコーヒー農園の様子★

コーヒー栽培の条件を地理的に分析

コーヒーの生育には、主に降水量・日当たり・温度・土質という4つの条件が必要です。これらの条件を満たす地域は、赤道を挟んで【北緯25度から南緯25度】まで、または【南回帰線と北回帰線】の間と考えられており、この一帯は「コーヒーベルト」と呼ばれています。

コーヒーの生育に適した地域に偏りが生じる理由を考えるためには、まず地球の動きや大気の循環について理解しなければなりません。

コーヒーベルトが生じる理由

地球は太陽の周囲を1年かけて1周します(=公転)。

公転と同時に、地球自体も1日で1回転(=自転)しています。その回転軸は23.4度傾いているため、時期と地域によって太陽光の量(=日射量)が変わりますが、年間を通じて日射量が多い地域は赤道周辺です。

夏至の頃は赤道よりも北の地域、冬至の頃は赤道よりも南の地域で日射量が多くなります。夏至の時期に日射量が多くなる(正午に太陽が真上に来る)地点を結んだ線を「北回帰線」、冬至の時期に日射量が多くなる地点を結んだ線を「南回帰線」と言います。一般に、回帰線の緯度は23度26分とされています【緯度・経度は度・分・秒で表す】。

上昇気流が発生

物体を同じ体積で比べた数値を密度(=重さ÷体積)といい、同じ体積で比べたとき、重いものは「密度が大きい」、軽いものは「密度が小さい」と表されます。赤道から回帰線付近の気候を考える上で重要になるのが、空気と密度が持つ2つの性質です。

・温度が高くなる(温められる)と、空気は膨張する

・形が定まっていないもの(液体や気体)の場合、密度の小さいものが、密度の大きいものより上にいく

赤道付近は単位面積あたりの日射量が多く、温められた空気は膨張し、体積が大きくなりますが、重さ(質量)は変わりません。

密度が小さくなった空気は上昇し(=上昇気流の発生→赤道低圧帯(熱帯収束帯)が形成される)、積乱雲を作り、この雲がスコールをもたらすため、この地域では降水量が多くなります

地上から高さ10~16kmまでを対流圏といい、この範囲では100m上昇するごとに、気温が0.65度下がります。気温が下がると、膨張した空気は収縮し、密度が高くなり重くなります。しかし、赤道~回帰線付近では、絶えず上昇気流があるため、重くなった空気は下降することが出来ません。そのため空気は南北へ移動し、北緯・南緯30度付近でようやく下降します(=下降気流の発生→亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)が形成される)。

上昇気流が発生するエリアでは雲が発生するため、雨が多くなります(低気圧)。一方で、下降気流が発生する地域はその逆で、空気が膨張し、空気中の水分は水蒸気となるため、雨が少なくなります(高気圧)。そしてまた、水蒸気を含んだ空気は上昇出来る場所まで移動するのです。

地図上の赤い線が北緯・南緯30度の線です。日本の九州など、海に近い地域では雲が発生し雨が降りますが、海から離れたアフリカ北部や中東、中国内陸部、オーストラリア、アルゼンチンなどでは砂漠が広がります。

1年の大半は、赤道付近で温められて上昇した空気が下降するため、北緯30度付近≒回帰線付近は乾季となります。一方で、夏至や冬至の時期は日射量が多くなり、上昇気流が発生するため雨季となります。コーヒーの栽培に適した【雨季と乾季のある地域】は、このようにして形成されるのです。

昼夜の寒暖差と標高もポイント

赤道付近では年間を通じて日射量が多いため、気温も高い地域が多いですが、標高が高い場合、100m上昇するごとに気温が0.65度下がるため、気温が低くなる地域もあります

同じ火力で1分間、岩と水を熱すると岩のほうが熱くなり、1分間冷却した場合も岩の方が冷たくなることは想像しやすいはずです。岩に比べて水は、熱の影響を受けにくいのです

これを地球に置き換えると、太陽の光に熱せられた地面(岩)や海(水)が、空気を温めたり冷やし、その空気の温度が気温として表されます。海沿いでは気温差が生じにくく、海から離れた内陸や標高の高い場所では、地面の熱の影響を受けて、1日の中でも気温差が大きくなります。

コーヒーをはじめ、様々な作物は、日中の光合成によって栄養(糖)を作り出します。作物も人間と同じように呼吸をしており、日中作り出された栄養は、呼吸をするためのエネルギーとして消費されます。

作物の呼吸は、気温が高いと活発に行われ、気温が低いと抑制されます。つまり、日中に光合成が盛んに行われ、夜の気温が低いと、呼吸による栄養の消費が抑制され、作物が栄養を多く含んだ状態となるのです。そのため、コーヒーの生育条件には、昼夜の寒暖差も重要であるとされています。

雨季・乾季のある気候でコーヒーが育つ

コーヒー栽培では、気候が重要な役割を果たしていることが分かります。コーヒー生産量が多い国のケッペンの気候区分は以下の通りです。

ブラジルの3州はCfa気候ですが、緯度はちょうど南回帰線付近に位置しているため、雨季と乾季があります。Aw気候やCw気候も雨季と乾季がある気候帯です。インドネシアやコロンビアには、年間を通じて雨が降るAf気候もありますが、生産の中心は雨季と乾季があるAm気候地域であると考えられます。また、いずれの生産地も標高が高いため、赤道付近に位置していても気温はそれほど上がらず、昼夜の寒暖差が発生します。

日本でもコーヒーの栽培は行われていますが、雨季と乾季がある地域はありません。標高が高い地域は気温が低くなり、コーヒーの天敵ともいえる「」が発生してしまいます。

★参考:徳之島コーヒーを飲む!★

沖縄に咲くコーヒーの花

もともとコーヒーは日本に自生していたわけではなく、小笠原諸島は明治時代、沖縄は大正時代に持ち込まれたことをきっかけに栽培が始まり、今日まで生産拡大のための努力が続けられています。コーヒーはエチオピアが原産地とされ、ブラジルやベトナムなど、現在のコーヒー産地の大部分も、もともと自生していたわけではありません。今回はコーヒーの産地を地理的な側面からご紹介してきましたが、次回は世界史的な側面からご紹介します。

.

今回はここまで。本日もありがとうございました。

★続きはこちら★

コメント

  1. 毛利景子 より:

    コーヒーと気候の関連について、体系的に説明してくださりありがとうございます。
    何度も読み返してみます〜!
    基礎知識が足りない私にはとっても役立つ内容でした!

タイトルとURLをコピーしました