2022年のゴールデンウイーク。緊急事態宣言やまん延防止など、コロナによる制限がないゴールデンウイークを迎えるのは3年ぶりということで、飛行機の予約状況も好調のようです。一方、沖縄では「レンタカーの予約が取れない」という課題が生じています。
レンタカーの予約が取れない
コロナの影響で沖縄の観光客数は激減。レンタカー各社は経費節減のため、保有する車両台数を減らしていました。
沖縄を訪れる観光客が少しずつ戻る一方で、感染症が再び拡大すれば、たちまちキャンセルの嵐となるので、増車にはリスクがあります。また、世界情勢の影響で、新車の納入にもかなり時間がかかる場合もあるようです。
私がTwitterで行った調査では、約8割の方が路線バスより少し値段が高くてもレンタカーを利用したいと回答。沖縄県が行っている「観光統計実態調査」からも、沖縄旅行ではレンタカー利用意向が高いことが分かります。
沖縄旅行と言えば、なんとなく「青い海を見ながらのんびり過ごす」というイメージが連想されますが、実際はそのように過ごすよりも、あちこち巡って忙しく過ごしたい人が多いようです。レンタカーは潜在的な旅行者のニーズを満たす役割を果たしているのでしょう。
車が必要な沖縄旅行の課題と解決策
ここでは旅行者のレンタカー依存によって生じる3つの課題を考察します。
渋滞が悪化する
沖縄県の人口と観光客の増加に伴い、自動車の保有台数も増加しています。
例えば、100mの道路に1台車があるとしたら、その車が自由に走ることが出来るのは100m。もし2台あれば50m、20台なら1台あたり5mです。これを「自動車1台当たりの道路実延長」といい、2018年の調査で沖縄県は全国平均の約半分となる7.5m/台、47都道府県でワースト4位。ちなみに、ワースト1位は神奈川県の3.2m/台ですが、那覇市周辺はそれよりも短い2.8m/台となっています。
沖縄県の旅客輸送のうち、公共交通機関(モノレール+乗合バス)が占める割合は3%程度。自家用車が90%を超えています。
親が子どもを学校に送り届けるのも沖縄文化のひとつ。2015年に行われた調査では、対象となった那覇市と浦添市の高校1年生うち、約半数が「自家用車(=親などの送迎)」で登校していると回答しています。
この結果、那覇市内では全国で最もひどいとも言われる渋滞が発生しているのです。仮に国際通りまで約10kmの場所に住んでいる人は、「平日の朝8時に国際通り集合」で車を利用する場合、6時半過ぎには家を出ることでしょう。
自動車の増加とそれよって悪化する渋滞に対応するため、沖縄本島では道路工事が積極的に行われています。しかしこれでは、「人々の移動手段を変える」という根本的な課題の解決にはなりません。
若者の沖縄来訪意向が下がる
2022年、沖縄振興開発金融公庫と日本交通公社による研究調査で、10代後半から30代の世代はレンタカーが必要であることを理由に、沖縄を旅行先として選ばないという傾向が明らかにされました。若者の車離れが進むにつれ、今後は「レンタカー利用に抵抗がある」「運転が苦手」という人はますます増えることが予想されます。
若者の車離れは沖縄だけでなく、車(レンタカー)移動が中心となっている地方に共通する課題です。地方では人口減少によって、公共交通機関の【赤字→減便→廃止】が相次いでいます。旅先のコンテンツを磨くことも大切ですが、今後は出発地から旅先(地方)までのスムーズな移動に関する情報発信が必要です。
私もよく田舎を旅しているので、旅行者としての意見を言わせていただくと、最新の運行情報を知ることが出来たらいいなと思います。例えば久高島フェリーのように、Twitterで毎朝「本日は全便通常運行です」などとツイートされているだけでも安心出来るものです。
また、沖縄では新しい公共交通機関として「鉄軌道導入」の議論も盛んに行われています。近い将来、レンタカー不足の課題は解決されるかもしれません。
■ 参考:沖縄の鉄道事情
レンタカーが取れないから沖縄に行かない
しばらくレンタカーの予約が取れない状況が続くと、今度は「レンタカーが取れないから沖縄に行かない」という旅行者が出てくることも考えられます。
沖縄県の観光客増加の背景にあるのはインバウンド観光客の増加。しかし、「日本人がダメならインバウンドだ!」という観光方針は非常に危険です。2018年、長崎県・対馬には非常に多くの韓国人観光客が訪れていましたが、日韓関係の悪化により急減。また、2018年に対馬に宿泊した人の内訳を見ると、韓国人観光客以外の数は減少しています。
結果として対馬には、日本人も韓国人も行かなくなってしまいました。どうやら日本人旅行者はインバウンドが多い場所を避ける傾向があるようです。レンタカーが必要であるにも関わらず、その予約が取れず、しかもインバウンド観光客が多い場所に、日本人旅行者が足を運ぶことは無いでしょう。
今ある公共交通機関を利用しましょう!
沖縄観光の課題は「レンタカー不足」ではなく「沖縄旅行のレンタカー依存」と言えるかもしれません。その解決策は、今ある公共交通機関をもっと活用することです。
ということを、本来は沖縄県の観光を司る沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)がPRしなけらばなりません。例えば、沖縄本島北部を走る路線バス【67】辺士名線は日本でも屈指の絶景路線バス。この路線をPRすると、世界自然遺産・やんばるへの集客にも繋がります。
■ 参考:路線バス【67】辺士名線旅行記
しかい、沖縄に住んでいる人(OCVBや県職員の皆さん)も車を利用するのが一般的なので、バスの魅力をPRするのはきっと難しいのでしょう。
観光客や人口が増える一方で、沖縄のバスの利用者数は年々減少。沖縄本島を走る主要バス会社4社は赤字で、補助金が投入されています。利用者の数が会社の売り上げに直結するバス事業。バス利用者が減少してしまうと、ドライバーさんの賃金も上がらず、今度はドライバーが不足。
最終的に行き着くのはバスの減便や路線の廃止です。若者の車離れが進み、モノレール以外の鉄道が無い中で、バスまで失くなってしまっては、いよいよ沖縄に来た旅行者の行き先が無くなります。
路線バスとゆいレールが3日間乗り放題で5,500円という破格のお値段の周遊パスもありますが、恐らくこの周遊パスの存在を知っている観光客はほとんどいないでしょう。沖縄県民は利用することが出来ないパスなので、ぜひ観光客の方に利用していただき、沖縄の公共交通を盛り上げていただきたいです。
■ 参考:沖縄本島最北端 辺戸岬にバスで行く
バスだけでなく「船」もあります。那覇市内から美ら海水族館がある本部半島までは、鹿児島行きの大型フェリーと高速船で行くことが出来ます。
■ 参考:沖縄の高速船タクマ3に乗ってみた
あとはのんびり歩きましょう。きっと、車ではあっという間に過ぎ去ってしまう何気ない景色の中に、本当の沖縄らしい景色が見つけられるかもしれません。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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