1000万人を超えた沖縄の観光客数
平成30年度、沖縄県を訪れる観光客数は1千万人を超え、6年連続で過去最高を記録。
LCCやクルーズ船の充実により、東アジア方面からの観光客増加が著しい一方で、国内観光客数も700万人を超え、過去最高の数となりました。しかし、令和元年度(平成31年度)の末から、新型コロナウイルスの影響で観光客数は激減。沖縄の観光は大きな打撃を受けています。
そうは言っても、令和2年度も約260万人の観光客が沖縄を訪れています。令和2年度だけ11月の観光客数が年間で最も多くなっているのは、GoToキャンペーンと「外出OK」という世の中の風潮が反映されているためでしょう。
沖縄は家からふらっと車で行ける場所ではありません。本土から飛行機で片道2時間以上。宿泊する人がほとんどなので、休みを確保する必要もあります。多くの地域が観光客の集客に苦しむ中、それでも沖縄には多くの人が足を運んでいるのです。
沖縄旅行の目的は何か
そこで私が気になるのは『沖縄旅行の目的は何か』です。
コロナ前から「量から質への転換」が求められている沖縄の観光。観光客の方が本当に求めていることを提供することが出来れば、満足度が上がり、質の高い観光へとつながるはずです。
私は沖縄移住前にも何度か旅行で沖縄を訪れていました。旅行者の私が沖縄に求めていたのは、完全に「島」です(笑) 沖縄本島をまともに観光したことがなく、離島ばかりに足を運んでいました。
よく知らなかったというのもありますが、沖縄本島で特に行きたい場所もなく… 沖縄に移住して2年以上が経った今も、美ら海水族館やアメリカンビレッジ、首里城正殿、ガンガラーの谷など、沖縄の定番観光地には行ったことがなく、特に行きたいとも思いません。沖縄に来たはものの、どこへ行ったらいいのか分からず、とりあえず有名な場所に行くという観光客の方も多いはず。私には「有名だから行く」という発想がありません。
こんな感じなので、沖縄へ旅行に来る人が沖縄に何を求めているのか、いまいち分からないのです。沖縄といえば「海」ですが、綺麗な海は沖縄以外にもあります。のんびりした雰囲気は、離島や田舎に行けば感じられるものです。
冬の時期に【暖かさを求めて】【花粉症を避けて】という理由なら分かります。しかし、沖縄で一番観光客が多いのは夏です。台風のリスクもある季節なのに… など色々考えていると、やっぱり沖縄が旅行先に選ばれる理由が分からなくなってくるのです。
■ 参考:台風が直撃した日の沖縄の様子
県の統計と独自調査から観光客を分析してみた
沖縄を訪れる観光客の特性を分析する上で参考になるのが、沖縄県が出している「観光統計実態調査」です。
例えば「来訪の一番の目的」という項目を見ると、「観光地巡り」「海水浴・マリンレジャー」「保養・休養」を目的とする旅行者が多いと分かります。ただし「海水浴・マリンレジャー」を目的とする旅行者が多いのは夏だけ。年間を通して多いのは「観光地巡り」「保養・休養」を目的とする人々です。
一方でこちらのデータを見ると、「本部半島」に訪れている人が26.3%いますが、本部半島にある「海洋博記念公園」に訪れている人は35.8%。数字にかなりの誤差があるので、こうしたデータを100%信用するのは危険です。
【助けてください】
— Jovislander@沖縄にいる旅好き (@jovislander) March 7, 2021
私の旅行の嗜好がマニアック過ぎて、「普通の感覚」を見失っています。
観光の仕事に携わっていて、これではまずいので、15問・2択式の【沖縄旅行アンケート】を作りました。沖縄好きな人も、沖縄に来たことない人も、RTだけでもぜひ!
回答はこちらからhttps://t.co/ErM6VzfHoh pic.twitter.com/EvGWkYwGIL
そこで、沖縄県の調査結果を参考にしながら、【沖縄旅行についてのアンケート】を独自で作成し、Twitterで回答を呼び掛けてみました。その結果、約2か月で100人以上の方に回答していただいたので、ここからはその結果をもとに、沖縄に旅行で訪れる観光客を分析します。
★引き続き回答を募集します!ぜひご参加を。★
回答者の属性について
まずはアンケートに回答していただいた方の属性から。
沖縄県外に住んでいる方が9割である一方、沖縄に住んでいる方にもご回答いただきました。私もそうですが、沖縄に住んでいる人も沖縄県内を旅行するので、回答はそのまま参考にさせていただきます。
Twitterで行った調査なので、30代・40代・50代の方の回答が多いのは予想通り。沖縄県の調査でも、沖縄を訪れる旅行者で最も多いのが「40代」、次が「50代」となっており、まさに意見を聞きたい世代からの回答を得られたのは大きな収穫と言えるでしょう。
男女比が半々となったのもよかったです。
「沖縄には何回来たことがありますか(修学旅行を除く)」という質問については、質問項目にミスがありましたが、1度は沖縄に来たことがあるという方が9割以上。6回以上沖縄に来ているという方も半数以上です。
沖縄県の調査でも、86%以上の人が2回以上沖縄に来たことがあると答えており、さらに前回の来訪時期が「1年以内」という人が4割を超えています。
年間700万人以上の日本人旅行者が沖縄を訪れている一方で、私自身「沖縄に行ったことがない」という人に会うことが多いです。年間の観光客数はあくまで延べ人数。1人が1年で5回沖縄に来たら「5人」として数えられます。
リピーターに支えられている沖縄の観光。一度沖縄へ来たことがある人にとっては身近である一方、沖縄に行ったことがない人にとっては「遠い」や「憧れの地」になっているのでしょう。ではリピーターの方は何を求めて、何度も沖縄へ足を運ぶのでしょうか。
レンタカーであちこち行きたい
次の質問は旅行中の移動手段についてです。
レンタカー利用希望が8割近い結果となりました。路線バスも海沿いを走ったりするので、個人的にはおすすめです。市街地は便数や行き先も多く便利である一方、行き先や本数が多すぎて分かりにくいというのはあるかもしれません。
■ 参考:沖縄本島路線バスの旅
路線バスの複雑さをさらに混沌とさせるのが〈遅延〉です。例えば、10時のバスに乗るつもりで待っていて、10時に来たバスに乗ったら、実は遅れていた行先の違うバスだった、ということもよく起こります。
路線バスが遅れる大きな原因は「渋滞」です。レンタカーの利用が増えると渋滞が悪化し、路線バスにも影響するという悪循環になっています。そうは言っても、「観光地めぐり」を目的に沖縄へ訪れている人が多いことを考えると、少し高いお金を払ってでも、車の旅がいいのかもしれません。沖縄本島もなかなか広いので、車であれば効率よくあちこち巡ることが出来ます。
■ 参考:沖縄とレンタカー問題
遠くても知名度がある場所に行きたい
「世界遺産候補!やんばるの森」or「空港から車で30分の亜熱帯の森」、どちらへ行きたいかという質問については、やんばるの森を選ぶ人が85%となりました。やんばるの森までは高速を使っても空港から2時間以上かかりますが、これが「世界遺産」というブランドの強さなのか、それとも「沖縄の森といえばやんばる」という知名度なのか、その両方なのか…
ちなみに、空港から30分の場所にある亜熱帯の森とは「ホロホローの森」(写真)。観光客にはほとんど知られていない穴場スポットです。
あちこち巡りたい人が多い
「沖縄らしい体験が全て揃っている」or「あちこち巡りながら沖縄らしい体験をする」、どちらが魅力的に感じるかという質問では、9割以上の方が「あちこち巡りたい」と答えています。
沖縄県の調査から「宿泊先」についての結果を見ると、リゾートホテルの人気が高いです。これに旅行目的として割合が高い「保養・休養」を掛け合わせると、沖縄に旅行で訪れる人の多くは「リゾートでのんびりしたい」であろうという推測が立ちます。
それならば、リゾートホテルとその周辺に沖縄らしい体験が全て揃っていたらベストだと思いますが、どうやらそうではないようです。沖縄を訪れる旅行者の根底には、「リゾートホテル」を拠点に「のんびりとあちこち巡りたい」という欲求があるのかもしれません。
「沖縄で理想の過ごし方」についての回答は「地元の人と関わりたい」が半数を超えましたが、地元の人と関わるよりも「リゾートホテルで過ごしたい」という人も4割以上。沖縄にリゾートを求めている観光客は結構多いことが分かりました。
沖縄の海は見るだけで十分?
次の質問は「海の楽しみ方」について。
そもそも私は、ほとんどの旅行者が綺麗な海を求めて沖縄へ足を運んでいると思っていたので、旅行目的の1位が「観光地巡り」で、2位が「海水浴・マリンレジャー」というのが意外でした。皆さんは海を見て楽しむのか、体験して楽しむのか…
結果はほぼ半々になりました。海は見るだけで十分という人も多いのです。実は私も、沖縄に移住してから2度しか海で泳いでいません。こうした実情がある一方で、じゃらんなどの体験予約サイトを見ると、沖縄にはマリン事業者が非常に多く、沖縄の青い海は超レッドオーシャンとなっています。
沖縄に数々あるアクティビティの中で、海以外で人気が高いのは「マングローブの川をカヤック」で見学するツアー。ネット記事や雑誌でよく特集されている【沖縄でおすすめの体験】でも、マングローブカヤックは必ず登場します。
そこで今回、海とマングローブのカヤックを比べてみたところ、マングローブよりも海の方が人気と分かりました。しかし、実際はマングローブカヤックには多くの人が訪れる一方で、海のカヤックツアーに参加する人は少ないようです。旅行者の心理は本当に読み解くのが難しい…
体験とガイドは必要とされていない?
沖縄にはマリン事業者以外にも、数多くの体験事業者がひしめき合っています。じゃらんに掲載されている体験事業者の数は47都道府県のうちダントツで日本一です。
「沖縄旅行でちょっと退屈だなと思ったら」という質問の回答は、残念ながらハンドメイド(体験)よりもショッピングが人気でした。需要と供給が一致していません。
沖縄の果物も自分で収穫を体験するより、沖縄で買ったものを家に送りたいという回答が半数を超えました。
私は普段から畑にお邪魔して、作業のお手伝いなどをさせていただき、その面白さを分かっているので、これは「うーん」という結果です。
■ 参考:マンゴーのハウスを見学してきた
体験とセットになるのがガイドですが、沖縄旅行にガイドがほしいという人も4割に留まりました。ガイド内容や料金、ガイドさんの年齢などを示していないにも関わらず、4割はかなり少ない印象です。残りの6割の人は、無料でもガイドはいらないと答えるでしょう。
事前に調べないで沖縄に来ている?
続いては、沖縄旅行のプランについての質問です。
飛行機と宿だけ決める人が6割。沖縄に来る旅行者は、事前にあまり旅行情報を調べてこないようです。
県の調査結果より【旅行先として沖縄を選んだ際に決め手となった情報源】を見ると、「以前来訪したことがある」という理由が最も多く、「自分の意志外」「家族や友人・知人等の紹介」が続きます。やはり、旅行者は自ら積極的に沖縄の情報を調べてはいないのです。
来訪回数別の決め手となった情報源をみても、やはり自分から情報を取りに行っている人は少なめ。一方で、5回以上沖縄に訪れている人は、個人ブログやSNSなど「個人発信の情報」を求めているようです。
何度か沖縄に足を運んでいると、地理感覚も分かっているので、「とりあえずあの辺に行って、あとは適当に決めよう」という場合もあると思います。では「とりあえずあの辺」の【あの辺】はどこが多いでしょうか。
こちらはRESASの「目的地分析」2019年8月の結果。美ら海水族館が圧倒的で、他のスポットも定番観光地ばかりです。
県の調査結果と照らし合わせると、本島西海岸のリゾートホテルを予約して本部半島を車で巡るのが、沖縄旅行の王道ルートになっていると分かります。
美ら海水族館がある海洋博公園の入園者数はコロナ前まで年々増加。2018年度は約500万人。およそ沖縄旅行者の2人に1人は足を運んでおり、リピーターの人も海洋博公園には足を運んでいることが分かります。
■ 参考:みんなが美ら海水族館に足を運ぶ理由
定番ばかりに足を運んでしまう理由
先ほどご紹介した「やんばるの森」も然り、RESASの結果を見ても定番観光地しか出てきません。
ネットで沖縄の旅行情報を調べると、出てくるのは「おすすめ○○選」というサイトばかりで、その内容も似たり寄ったり。これはページが表示されやすいように、SEO対策が取られている影響です。
旅行雑誌も有名な場所を紹介しないと売れないので、どの雑誌も似た場所を紹介するようになります。その結果、皆さん同じような場所に足を運ぶこととなり、コアリピーターの人は、個人発信の情報を求めているのです。
沖縄に来てからネットで情報を調べる傾向は、今後ますます高まっていくと考えられます。「体験」や「ガイド」は基本的に事前予約が必要ですが、事業者は直前予約OKや予約不要、体験に必要な荷物を持っていなくても参加出来る仕組みが必要です。
結果:観光客の目的は沖縄よりもリゾート
最後は「空港から車で約30分の穴場スポット」or「空港から車で1時間の定番スポット」、どちらに行きたいかという質問。
8割以上の方が空港近くの穴場に行きたいと答えています。ここまで分析してきた私は、最後の最後で「どっちやねーん!」と叫びたくなりました(笑)穴場に行きたいという一方で、出てくるのは定番スポットばかり。先ほどは空港から2時間のやんばるの森に行きたいと答えた人が多かったものの、この質問では空港から近い穴場が人気…
言葉選びによって、旅行者が行きたいと思うかどうか左右されるというでしょうか。遠い場所でも、例えば「世界遺産」という言葉ひとつが、旅行者を行動へ駆り立てているのかもしれません。
沖縄を訪れる人が何を求めているのか、今回のアンケートを通じて感じたのはやはり「リゾート感」。「沖縄が好きだ」という人が多く、実際リピーターが多い一方で、そうした人たちが沖縄に求めているのは、結局『ザ・観光地』『南国リゾート』で、沖縄らしさではないような気がします。
そこでアンケートの第2弾を実施します。今回は一部クイズ形式になっています。ご参加いただけるととても嬉しいです!
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調査は今後も続きます。最後までありがとうございました。
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