日本最南端の鉄道の駅はご存知ですか。単純に考えると、沖縄県に鉄道が走っていれば、その路線にある駅が日本最南端、または日本最西端の駅です。日本最北端・稚内駅にある看板には、最南端の駅が指宿枕崎線・西大山駅と書かれています。ということは、沖縄には鉄道が走っていないのでしょうか。今回は沖縄の鉄道事情をご紹介します。
沖縄の鉄道事情
2003年に開業した沖縄都市モノレール、通称「ゆいレール」は沖縄県内を走る鉄道です。モノレールは鉄道事業法で鉄道の一種とされています。また、ゆいレールの駅では「この電車は~」と放送されているので、電車と言ってもいいのでしょう。
開業以来、ゆいレールの利用者は年々増加していましたが、コロナの影響でその数が激減しているのを見ると、観光客の利用が多かったことが伺えます。実際、ゆいレールで最も利用者数が多いのは那覇空港駅です。
那覇空港駅の改札横にあるのが「日本最西端の駅」の碑です。
しかし、「日本最西端」という看板は長崎県・佐世保駅にも置かれています。
さらに、佐世保駅から佐賀県・有田駅を結ぶ松浦鉄道の線路は、佐世保駅よりも西に延びているため、佐世保駅よりも西に位置する駅がありそうです。まとめると以下の通り。
- 佐世保駅:JRの日本最西端
- 松浦鉄道の駅(たびら平戸口駅):2本の線路上を走る鉄道の日本最西端
- 那覇空港駅:正真正銘の日本最西端の鉄道の駅
冒頭でご紹介した西大山駅も「JRの」日本最南端の駅。日本の鉄道で最南端の駅はゆいレール・赤嶺駅。那覇空港駅のひとつお隣の駅で、駅前には石碑もあります。
日本最南端・最西端の鉄道と駅
開業時からゆいレールは那覇空港駅と首里駅の間を結んでいましたが、2019年10月に「てだこ浦西駅(浦添市)」まで延伸となりました。
浦添前田駅ーてだこ浦西駅間には地下区間もあります。写真はトンネルに向かって下るモノレールの軌道。恐らくこれが日本最南端・最西端の鉄道トンネルだと思われます。
こちらは終点のてだこ浦西駅。これまでゆいレールは2両編成での運行されていましたが、2023年度からは一部列車が3両編成になる予定です。
2020年3月からはSuicaも利用できるようになり、Suicaのペンギン(愛称は無いらしい)も沖縄に上陸しました。
こちらは2019年10月20日、お客様感謝デーの時に撮影した動画。なんとこの日1日はゆいレールが全線で終日乗車無料ということで、仕事終わりに全駅下車するというチャレンジをしました(笑)
昔は鉄道が走っていた?
戦前の沖縄には、2本の線路の上を走る鉄道がありました。その鉄道の名は「沖縄県営軽便鉄道」です。
ゆいレール・旭橋駅(那覇バスターミナル)付近に、軽便鉄道の拠点・那覇駅があったようで、現在も転車台の遺構を見ることが出来ます。
こちらが当時沖縄を走っていた車両の模型。那覇駅からは与那原・糸満・嘉手納の3方向へ路線が延びていました。
1914年の与那原線から運行が開始された軽便鉄道ですが、1945年3月以降は沖縄戦の影響で運行を停止。その後、復活することはありませんでした。写真は浦添市にある軽便鉄道の廃線跡。
戦争とその後の都市開発により、沖縄県営軽便鉄道の線路跡を見ることが出来るのはここだけですが、廃線跡は道路沿いの歩道にあり、大きな看板もないので、あまり知られていません。
与那原駅舎で沖縄県営鉄道の歴史を知る
与那原町には、沖縄県営鉄道の歴史を知ることが出来る資料館があります。
かつての与那原駅が復元された資料館です。それほど大きくはありませんが、軽便鉄道の歴史を年表などでサクッと知ることが出来ます。館内は撮影禁止なので写真はありません。
こちらの切符が資料館の入場券。与那原は1914年に最初に開通した路線『与那原線』の終着駅でした。そのため、切符には「那覇より與那原ゆき」と書かれています。また18銭と表記されていますが、実際の入館料は100円です。
■ 参考:与那原駅舎 公式ホームページ
資料館裏手には、戦争当時から残る駅舎の柱が残されています。コンクリート駅舎だった与那原駅は戦争も乗り越え、戦後復興の過程では、消防署・役場・農協などとして活用され、2014年から資料館として整備されました。
今も沖縄に軽便鉄道が走っている?
コトバンクによると、軽便鉄道とは「線路の幅が狭く、機関車・車両も小型の小規模の鉄道」のこと。つまり、軽便鉄道は鉄道の種類のひとつで、路線名ではありません。
こちらは名護市にある「ネオパークオキナワ」の園内マップ。園の外縁に沿って線路が書かれており、入口横に「沖縄軽便鉄道」と書かれています。私はまだ行ったことがありませんが、どうやら今も沖縄には軽便鉄道が走っているようです。
■ 参考:ネオパークオキナワ 公式ホームページ
軽便鉄道以外にも鉄道があった
軽便鉄道は比較的知られていますが、沖縄県営鉄道以外にも鉄道があったことはあまり知られていません。
こちらは沖縄本島から東へ350kmの海上に浮かぶ南大東島。道路に埋まっている線路は「シュガートレイン」の跡です。南大東島には港へサトウキビを運ぶためのトロッコ電車が1983年まで走っていました。
こちらはお隣の北大東島にある断崖絶壁の線路。かつて島で採掘された「リン」を、ここから船に積み込んでいたものと思われます。
■ 参考:大東島に線路がある理由
こちらも沖縄本島・那覇市で撮影した写真。こちらの車両が沖縄で走った実績はありませんが、沖縄の本土復帰を記念して、九州からSLが届けられました。
ちなみに、沖縄本島のお隣に浮かぶ鹿児島県・与論島には、2本の線路とSLの車輪だけが置かれています(笑)
鉄軌道は必要なのか
現在は2本の線路を走る電車がない沖縄ですが、建設計画は着々と進んでいるようです。【沖縄鉄軌道計画】という、県の公式ホームページまで作られています。
Wikipediaによると、2020年着工の計画だったようですが、ルートもまだ決まっていません。赤字になることが目に見えていることから、議論が続いています。
ここからは個人的な考えですが、鉄道が出来ても、県民向けの需要はないかと思います。恐らく皆さん、駅まで車で行くことが考えられます。また、沖縄本島は今もバスがかなり便利です。あちこちへ行くことが出来ますが、利用者は少ないです。
■ 参考:2020年 沖縄路線バスの旅
ゆいレールの利用者も観光客の増減に大きく影響されているように、鉄軌道もまた観光客頼みになることでしょう。例えば、沖縄には親が子供(高校生含む)車で学校に送る文化があります。まずは県民に対し、今ある公共交通の利用を促すところから必要な状況です。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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