日本に吹く風~季節風が発生する仕組みと偏西風・海流の関係|観光アイデア教科書 Vol.32

観光アイデアノート

前回の記事で「地上では偏西風を感じることが出来ない」とご紹介しました。しかし、これは日本付近に限った話で、世界には地上でも偏西風を感じられる場所があるようです。

★前回の記事★

偏西風と海流の関係

まずはこちらが前回ご紹介した図。

熱帯収束帯で上昇した空気は亜熱帯高圧帯で下降し、赤道方面と極方面に移動。赤道方面への空気の移動が「貿易風」、極方面への空気の移動が「偏西風」です。貿易風は地上でも感じられる一方、偏西風は地表付近の冷たい空気の上を吹くため、地上で感じることは出来ないということでした。

こちらは気象庁のホームページより「海洋の循環」の図。いわゆる世界の「海流」が解説されており、太平洋にあるのが亜熱帯循環(北半球:時計回り/南半球:反時計回り)です。

そして解説文によると「海洋表層の循環は、主に海上を吹く風が海面に及ぼす力(風応力)によって駆動されており~」とのこと。貿易風は地上付近を吹くため、赤道付近の海流は東から西に流れることが分かります。

北半球では日本付近から北米へ向かう海流、南半球ではニュージーランド付近から南米へ向かう海流は、偏西風によって引き起こされると言われることが一般的です。言い換えると、偏西風が地上(海面)で吹かなければ、この海流が発生する原因を説明することが出来ないのです。

日本各地に吹く風

前回の記事では八丈島における年間の風向きを確認しましたが、ここでもう一度詳しく、日本各地に吹く風を確認します。

まずは北緯24度から27度に位置する石垣島・那覇・父島。冬は北北東、夏は南からの風が吹いています。しかし、これらの地域は偏西風が吹くとされる北緯30度よりも、やや南に位置しています。

★参考:冬の沖縄は意外と寒い★

ということで、続いては北緯32度から38度に位置する福江島(五島列島)・隠岐諸島・佐渡島。冬の風向きは北西である一方、夏の風向きは各地ばらばら。偏西風の影響があると、年中西風が吹いているはずですが、そうではなさそうです。

最後は北緯41度から45度に位置する北海道(函館・留萌・稚内)。こちらは夏も冬も風向きがばらばらで、地表付近に偏西風の影響はないと思われます。

1月
8月

各地の風向き(1月と8月)をまとめるとこの通り。風向きに統一感はなく、様々な要因によって風が吹いている様子が伺えます。ここで注目すべきは北海道の函館と稚内。夏と冬で風向きが真逆になっています。

日本に季節風が発生する仕組み

冬の時期、ユーラシア大陸の内陸部では気温が下がり、シベリア高気圧が形成されます(冷えて重くなった空気が下降するため)。もちろん日本付近も寒くなり、亜寒帯低圧帯が南下したような状態となります。これがいわゆる「西高東低の冬型の気圧配置」です。

北の冷たい空気と南の温かい空気は、いずれもコリオリの力を受けて右に曲がり、徐々に反時計回りの渦回転が始まります。こうして形成されるのが「前線を伴う温帯低気圧」です。

天気図は気象庁ホームページより

前線を伴う温帯低気圧では、寒冷前線に向かって寒気が吹き込み、温暖前線に向かって温かい空気が流れ込みます。

北半球では低気圧周辺に反時計回りの風が吹く一方、高気圧周囲は時計回りの風です。2022年12月18日の天気図に風を書き加えたのが上記のような図。高気圧と低気圧の気圧差が大きいため風も強くなります。日本の冬はこうした状態が多いのです。

夏の時期は、地球の公転と地軸が傾いている影響で亜熱帯高圧帯が北上。日本付近は小笠原高気圧に覆われるため、この高気圧から周辺の低圧部に向かって風が吹きます。冬に比べて高気圧と低気圧の気圧差は小さいため、風は穏やかです。

日本海側に大雪を降らすのも季節風の影響

このように、季節によって決まった向きに吹く風を季節風と言います。そして、偏西風が地上で感じられないのではなく、「地表付近では季節風が偏西風に優る」という認識が正しいようです。

季節風の影響が無い地域では、地上や海上でも偏西風が感じられると思われます。また季節風が吹く地域でも、北緯30度から60度付近の上空では偏西風が吹いているのです。

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今回はここまで。本日もありがとうございました。

★続きはこちら★

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