地上で感じられるのか?偏西風(ジェット気流)が発生する理由|観光アイデア教科書 Vol.31

観光アイデアノート

羽田空港から那覇空港までの所要時間は2時間45分前後。一方で那覇空港から羽田空港までの所要時間は2時間半前後と、羽田→那覇よりも15分ほど早く到着します。これは上空に吹く「偏西風(ジェット気流)」の影響と言われています。

★前提となる知識★

大気の循環とコリオリの力(転向力)

偏西風が発生する理由を考える上で重要になるのは空気の性質です。

  • 空気は温められると軽くなって上昇し、冷やされると重くなって下降する
  • 空気は高いところから低い場所に移動する

赤道付近で温められた空気は、上空で南北の極方面に向かって流れます。この時に形成されるのが低気圧(熱帯収束帯)です。

こちらは地球を北極の真上から見た図。赤道付近の地点Aで温められた空気は上昇し、北極方面へ向かいます。

2時間後、上空の空気は引き続き直線的に北極へ向かっていますが、地球が自転しているため、空気の出発地点Aもまた移動しています。

4時間後
8時間後

4時間後と8時間後の空気と地点Aの位置関係はこの通り。A地点から見ると、空気は右に曲がりながら移動しているように見えますが、空気は直線運動を続けています。

北半球を南北に移動する物体は右方向に、南半球を移動する物体は左方向にカーブする(見せかけの)力が働いているのです。これを一般に「コリオリの力(転向力)」と言います。赤道付近で上昇した温かい空気は、この図の通り大きく右にカーブするため、北極まで到達することはありません

偏西風が発生する仕組み

赤道付近で上昇気流が発生する一方で、極付近では空気が冷やされ重くなるため、下降気流が発生します。この時形成されるのが高気圧(極高圧帯)です。下降した空気は地表に沿って、赤道方面へ流れていきます。

極高圧帯から赤道方面へ流れる冷たい空気は、60度付近で赤道方面からの温かい空気とぶつかります。冷たい空気と温かい空気がぶつかると、温かい空気が上昇するため、低気圧(亜寒帯低圧帯)が形成されます。亜寒帯低圧帯で上昇した空気は極方面と赤道方面に移動。

そして、熱帯集束帯・亜寒帯低圧帯という2つの低気圧の間に形成されるのが高気圧(亜熱帯高圧帯)です。赤道付近で上昇した空気は、緯度が高くなるにつれて冷やされ収縮。30度付近で下降気流となり、亜寒帯低圧帯から流れてくる空気もこの下降気流に合流します。

亜熱帯高圧帯で下降した空気は熱帯集束帯と亜寒帯低圧帯(高気圧から低気圧)へ移動。この時、亜熱帯高圧帯から熱帯集束帯へ向かう空気を「貿易風」、亜寒帯低圧帯へ向かう空気を「偏西風」と言います。

もちろん、貿易風や偏西風にもコリオリ力は働くため、北半球における貿易風の風向きは「北東」、偏西風は「西」となります。なお、北極から亜寒帯低圧帯へ向かう北東向きの空気は「極偏東風」と呼ばれます。

偏西風は地上で感じられるのか

気象庁ホームページより

北緯33度に位置し、周囲を海に囲まれた八丈島では偏西風を感じることが出来るはず… しかし、9月・10月の八丈島の風向きは東北東。偏西風を地上(海上)で感じることは難しそうです。

赤道付近で温められた空気は、亜熱帯高圧帯で下降した後、赤道方面と極方面へと移動します。ただし、温かい空気が温度の低い地上の空気よりも下へ行くことはない(温かい空気は上昇する性質)ので、偏西風を地上で感じることは出来ません。一方、貿易風は地上でも感じられます。

2つのジェット気流が飛行機に影響

こちらは再び地球儀を真上から見た図。同じ経度上に静止している物体Aと物体Bがあります。地球は24時間で360度回転するため、1時間で360度÷24時間=15度回転します。

3時間後の状態がこちら。物体Aと物体Bはそれぞれ45度移動し、変わらず同経度上にありますが、物体Aの移動距離の方が長いです。長い距離の移動にも関わらず所要時間が同じということは、物体Aの速度が早いのです。

地球上で東西方向に動く2つの物体がある場合、低緯度地域にある物体の方が高速で移動しています。そしてこの速度は、高緯度地域に移動しても維持されます(角運動量保存則)。この原理によって生じるのがジェット気流です。

熱帯収束帯から亜熱帯高圧帯へ向かう空気と亜熱帯高圧帯から亜寒帯低圧帯へ向かう空気は、コリオリ力で大きく右にカーブし、それぞれ亜熱帯ジェット気流寒帯前線ジェット気流と呼ばれます。ジェット気流は上空へ行くほど強くなり、航空機の運航に影響を与えているのです。

これらの風は「恒常風」と呼ばれ、季節などにより強弱はあるものの、基本的に絶えることはありません。そして、恒常風によって引き起こされるの現象のひとつが「海流」です。ということで、次回は海流について解説します。

参考

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今回はここまで。本日もありがとうございました。

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