宿の車で雨の口之島をドライブ!秘境・セランマ温泉へ 野生の牛も発見|2022 トカラ旅行記5

旅の思い出

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今回は「2022年 トカラ列島旅行記」その5をお届けします。

★前回の記事は こちら

宿の車で雨の口之島をドライブ

2022年5月16日、トカラ列島・口之島上陸2日目を迎えました。

まずは民宿なかむらさんで朝食。2泊5食のうちの3食目です。この日はフェリーとしまの入出港がないため、島から出ることが出来ません

特に予定もないので、1日島を歩くつもりでしたが生憎の雨。宿のご主人の計らいで、車を無料で貸していただけました。

そしておすすめされたのが、島の南端にあるセランマ温泉。1日あれば歩いても行けなくはない距離ですが、アップダウンが激しいので、車で行けるのは助かります。

カーナビを見ながら、自分の運転で口之島をドライブするのはとても貴重な経験です。バスやタクシー、レンタカー、レンタサイクルはないので、通常の観光は歩きが中心となります。

セランマ温泉を利用する際は、集落のコミュニティセンター(十島村役場出張所)で申し込みが必要です。

ここで入泉料200円を支払うと、温泉施設のカギを借りることが出来ます。

コミュニティセンターの外にも「さとのゆ温泉」と書かれた看板がありましたが、こちらは現在使用されていないそうです。

秘境 セランマ温泉へ

コミュニティセンター周辺には集落が広がっていますが、そちらの散策はまた後ほど。

赤字で示されている場所

1973年に完成した、島を1周する林道口之島線を時計回りに走り、セランマ温泉を目指します。

林道ですが道は舗装されており、やや狭いですが、前から車が来てもすれ違うことも出来そうです(対向車は1台も来ませんでした)。

この秘境の奥地にもKOMATSUのショベルカーがありました。どのようにしてここまで運ばれてきたのでしょうか。

あら、セランマ温泉はこの先ですが、道路が柵で塞がれてしまっています。しかし、立ち入り禁止というわけではなさそうです。

柵の横には「開けたら、必ず閉めてください」と書かれた看板がありました。ということは、この柵は開けてもいいということです。

一旦車を降りて、柵を開けて、車を少しを走らせてからまた降りて、今度は柵を閉めます。それにしても、この柵(ゲート)は野生牛の進入防止用とのことですが、「野生牛」とは何のことでしょうか。

案内板がありました。どうやら口之島には、西洋の牛による品種改良の影響を受けていない、純血種黒毛和牛(古代からの日本の在来種)が野生化しているようです。

さっそく道路に牛の糞が落ちていました。口之島の野生牛についての論文によると、野生牛の生息数について正確な記録はなく、役場や島民もその数は把握していなかったと報告されています。

国土地理院地図より

その理由とされているのがこちら。国土地理院地図を見ると、口之島南部には最高峰・前岳(628m)、溶岩ドーム・燃岳(425m)、タナギ山(453m)、横岳(501m)という4つの山が集まっています。

その影響で、勾配9.6%の坂を上ったと思ったら…

勾配14.6%の坂を下りるような道が続きます。

この大自然の中に生息する野生牛の数を把握するのは困難ということです。

対向車と野生牛に警戒しながら、ゆっくりと車を走らせます。

セランマ温泉の看板がありました。ここからは林道を外れ、カーナビやGoogleMapには載っていない道を走ります。

そして、集落を出発してから約1時間、セランマ温泉に到着!今回はたまたま車を利用することが出来ましたが、通常はここまで歩きです。山奥にある温泉や野湯を除いて、東京から訪れるのが大変な秘境温泉のひとつと言えるでしょう

コミュニティセンターで借りた鍵を使って建物の中へ。

温泉はこの建物の中にあるので、何も知らずにここまで来ると、温泉に入ることは出来ないのです。なお、この時の利用者は私1人でしたが、温泉の鍵はいくつかあるようなので、貸し切りではありません。

こちらがセランマ温泉利用時の注意。諸々のスイッチを入れるところから、掃除をして帰るところまで、完全セルフ方式です。

まずは蛇口をひねり、水も使って湯加減を調整しながら、湯船にお湯を溜めます。

これで温泉の体裁が整いました。

温泉成分はこの通り。泉質は硫酸塩泉です。

シャンプーや石鹸の備え付けがないので、民宿なかむらのご主人に貸していただいたものを利用します。

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は IMG_3351-1024x768.jpg です

セランマ温泉までのアクセスをまとめると以下の通り。

  • 週2~3便のフェリーとしま2に乗船
  • 鹿児島市内から船で6時間(奄美から9時間半)
  • 港から歩いて約8km
  • コミュニティセンターで鍵を借りる必要あり
  • コミュニティセンターにスタッフの方がいるかどうかは運次第

改めてこの温泉に訪れることが出来た価値を噛みしめながら、お湯に浸かっていました。また、この時は気が付きませんでしたが、どうやら内湯だけでなく露天風呂もあったようです。

トカラの固有種のオタマジャクシ

温泉から上がった後は、自分でお湯を抜いて、利用前の綺麗な状態に戻します。

しばし休憩スペースでのんびりと。ここで宿で作っていただいた昼食を頂きました(2泊5食の4食目)。

周囲に電線は見当たりませんでしたが、防災無線らしきものが設置されており、電気は通っています。スマホの電波は繋がりませんでした。

せっかくここまで来たので、帰る前に温泉の周辺も少し散策。

約500mの整備された遊歩道が海まで続いており、遊歩道の脇を流れる小川からは湯気が立っていました。実はこの小川、知る人ぞ知る超貴重なスポット

ここにトカラ列島に生息する唯一の在来種両生類で、絶滅危惧種にも登録されているリュウキュウカジカガエルのオタマジャクシが生息しているのです。

水温46.1度にも達する温泉に生息し成長するオタマジャクシは他にないそうで、かつてNHK「ダーウィンが来た!」でも特集されています。

この時は湯気が激しく、水中の様子は良く分かりませんでした。また雨も降っていたので、海までは下りず、温泉の鍵を閉めて集落へ戻ります。

口之島の固有種 タモトユリ

口之島のシンボルとなっているのは、オタマジャクシではなく、野生牛と口之島の固有種・タモトユリです。

口之島の案内図の一文目にも「県指定天然記念物のタモトユリが自生しています」と書かれています。

港の防波堤に描かれているのも野生牛とマンタ、北緯30度、そしてタモトユリ(右奥)。

江戸時代には、毎月12本のタモトユリを幕府に上納する習わしもあったそうです。こちらの案内には「産地は明らかにせず」とありますが…

現在は道路の案内看板、セランマ温泉の下に『タモトユリ自生場所』と産地が明記されています。

道端に咲いていたこれがタモトユリかと思いましたが、こちらはテッポウユリ。タモトユリは花を上向きに咲かせるようです。鹿児島県教育委員会によると、タモトユリの名前の由来として2つの説が紹介されています。

  • 自生地が断崖絶壁で、たとえ手に入れても袂(たもと)に入れないと持ち帰れない
  • 自生地が「袂ケ浦(たもとがうら)」に近い

GoogleMapで「袂ケ浦」を調べても出てこず、断崖絶壁へ行くのも危険です。

結局、自生しているタモトユリは見ることは出来ませんでした。こちらはコミュニティセンター前で育てられていたタモトユリ。6月下旬から7月に純白で香りの高い花を咲かせるそうです(この日は5月16日)。

野生の牛を発見

そして、飼育された状態の牛はあちこちにいますが、もうひとつのシンボル「野生牛」の姿も見ていません。セランマ温泉からの帰り道で見られるか、それとも貴重でなかなか見ることは出来ない存在なのか…

と、思ったら歩いていました!道路の真ん中を早足で歩いているので、追い抜かすことも出来ません。牛の後に続いて車を走らせます。

先ほどご紹介した論文によると、1918~1919年に諏訪之瀬島から持ち込まれ、前岳周辺で放牧されていた牛が山へ脱走。牛を管理することが出来なくなり、野生化したそうです。

西洋種の影響を受けていない日本の在来牛は、山口県萩市に生息する見島牛と口之島牛の2種類しか残っていません。今回出会った野生牛は黒毛でしたが、他にも様々な毛色や模様の牛がおり、この毛色変異が日本の在来牛の特徴とされています。多くの絵画や絵馬にも、その姿が描かれているそうです。

このとき出会った野生牛は、全力で逃げるような素振りは見せず、追い抜かす時には写真の通り、横に車を止めて(車内から)撮影することが出来ました。かつては、野生牛に近づくことが出来ず、観察は非常に困難なものだったそうです。

論文では、約10年間も捕獲が全く行われなかったことで、人間に対する警戒心を持つ牛がほとんどいなくなったと綴られています。再び柵が設置されており、ここまでが口之島南部一帯の野生牛ゾーンです。

この草原の中にも、よく見ると柵と水飲み場があります。かつてはここでも牛が放牧されていたのでしょう。

今回お借りした宿の車と口之島最高峰・前岳。セランマ温泉があるのは、この山の向こうです。

山をズームしてみると、中腹を横切る線があります。この道は現在危険なため、通行止めとなっています。

時刻はまだお昼過ぎ。セランマ温泉の鍵を返却し、午後は集落を散策してみることにします。

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今回はここまで。本日もありがとうございました。

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