勉強の意味あるの?学生時代に学ぶ地方創生と地域活性化を考える|観光アイデア教科書 vol.9

観光アイデアノート

2016年頃から、全国の大学で「地方創生」や「地域活性化」を学ぶ学部が開設されるようになりました。

それ以前から「観光学部」という学部も存在します。地域を活性化させる手段として、観光は地域の人や資源と密接に関係しており、地方創生の柱のひとつとも言われています。また高校生が地域と関わるような取り組みも行われていたりします。

そこで今回は【学生時代に学ぶ「地方創生」「地域活性化」】について考えてみます。

学生時代に地方創生・地域活性化を勉強することに意味はあるのか

「授業で田舎に行って、地元の人とワークショップをしました」
「地域のお祭りのお手伝いをしました」

これはよく「地域活性化に関わった」という学生から聞かれる話です。

こうした学生が、自分の関わった地域に愛着を持ち、定期的にそこへ通ったり、定住したりして、学生時代に勉強したことが地域に還元されればいいのですが、実際そうした例はほとんど聞かれません。

そこでまず、「学生時代の地方創生・地域活性化を勉強することに意味はあるのか」という疑問が浮かび上がります。

私が地域活性化に興味を持ったきっかけ

かくいう私も、大学時代はいわゆる「地域活性化」の勉強をしていました。

そもそも私が地域活性化に興味を持ったきっかけは、浪人時代の旅の道中でのこと。

★旅の様子★

高知県・沖の島で遊んだ帰り、船の甲板でおっちゃんに話しかけられました。そこで聞いたのは、沖の島の隣に浮かぶ「鵜来島」の話。

鵜来島の人口は約20人、高齢化率はなんと80%。インフラはあるのに、このままだと無人島になるという話でした。このとき初めて、地方の人口減少や高齢化という課題に直面したのでした。

★2018年 鵜来島旅行記★

日本には400以上の離島があります。島ごとに異なる景色や文化があるのに、これを色んな人に楽しんでもらえないのはもったいない!と思い、大学では観光やまちづくりを勉強することに。

私が大学に入学したのは2014年。ちょうど安倍首相によって「地方創生」という言葉が発表されたのと同じ年です。

モノを売る、人を呼ぶ

大学3年生の時、授業の一環で兵庫県の家島を訪れました。それをきっかけに、池袋で行われるイベント(アイランダー)のお手伝いをすることになりました。

日本全国の島がアイランダーに出展する目的は「島をPRするため」。土日の2日間で、例年1万人以上が訪れるこのイベントで、まずは島の名前だけでも知ってもらいたいという島が多いです。

ブースでは特産品の販売やパンフレット配布、移住相談などが行われます。

しかし、ブースの出展料も高く、特産品もあまり売れないので、交通費や送料などを考えると、赤字の島が多いです。私も家島ブースのお手伝いで与えられたミッションは「特産品を完売させる」こと。つまり「モノを売る」ことです。

どれだけ地域活性化の勉強をしていても、モノを売るための手法を学ぶことは出来ません。モノを売るためには、ブースに「人を呼ぶ」ための工夫も必要です。

★参考:モノを売ることは出来ますか?★

まず勉強すべきことは「お金と人の流れ」の基礎

「モノを売る」「人を呼ぶ」というのは、当然、イベント以外の場面でも求められます。

例えば、人口20人の鵜来島は『釣り』のメッカとして有名ですが、島でどれだけ魚が獲れても、島にいる人に売れる魚の数には限りがあります。

島外に売るとしたらどこで売るのか、北海道の魚と並んだ時の強みは何かなど、売り方を考えなければなりません。

「釣りのメッカ」を前面に押し出して、島に人を呼ぶなら、広告やウェブサイトのデザインなども考える必要があります。

話をより具体的に発展させると、広告やウェブサイトを作るお金はどこから来るのか…

地域で何か新しいことを始める際には、国や自治体から出ている公募事業を使うと、お金がもらえたりするのですが、その事業を受託するにはアイデアはもちろん、様々な資料を作らなければなりません。

そうした資料では通常、写真や図を使うことが出来ず、文字だけで事業内容を綴る必要があります。そのため、文章を書くスキルも大切になってきます。

書類による選考を通過したら、プレゼンのためのパワポ資料を作らないといけなかったり。さらには収支計画を立てるために会計も…といった感じ。

仮に1年間の事業を受託したら、事業を遂行するのはもちろんですが、その傍らで人脈づくりなど、次年度以降につながるような根回しも必要です。

勉強することが非常に幅広いのです。おそらく「地域活性化」や「地方創生」ほど、勉強すべき分野の幅が広いことは他にないのではないでしょうか。

地方創生や地域活性化に取り組むために、本来まず勉強すべきことは「お金と人の流れ」の基礎です。事例研究やフィールドワークではありません。経済学や経営学を学んで、そこで学んだ知識を地域活性化に生かしていくのがいいと考えています。

また、島の名前を知ってもらうだけで、島に人が訪れることはありません。島の魅力を上手に語る話術立ち回りコミュニケーションも必要です。これは地域の人と関わる際にも必要とされるスキルです。

ちなみに、プチ自慢ですが、家島の特産品は全ブースの中で最も早く完売となりました。

地域活性化のスタンスを決める

一方で地域活動に参加してみたいと思っても「参加の仕方が分からない」という声が多いという調査結果が出ています。

その場合はまず、「面白そう」「行ってみたい」と思った地域の勉強をすることです。歴史や人口、産業など、様々な勉強をする中で、地域活性化のスタンスを決めるといいでしょう。

そして、自分で決めたスタンスで地域に関わると、どのようなお金・人の流れが起こり、地域にはどういったメリットがあるのか。そこまで考えられると、自分がどういった形(職種など)で地域に関わるといいのかというのも具体的になります。

私は学生時代に地域活性化を勉強していて、今も地域と深く関わる仕事をしていますが、学生時代の勉強は今も役に立っています。それは「大学で勉強したことを生かせる場所」を探していたからだと思います。

私は自分の中で地域活性化のスタンスが決まっていました。 勉強していたのは「観光による地域活性化」。簡単に説明すると、観光は人もお金も動きます。また、旅行を通じてその地域が好きにんった人が、その場所に移住することに繋がるかもしれません。

実際に東京圏出身の人が、地方暮らしを意識したきっかけのトップは「旅行」です(参考: ~移住等の増加に向けた広報戦略の立案・実施のための調査事業 報告書~ )。

そこで私は、地域に密着した観光を行っているような場所を探していました。

とにかく、皆で一緒に何かをやった達成感や「楽しかった感」だけが残るようでは、地域活性化にはならないのです。その意識があるだけで、学生時代の勉強の質も上がると思います。

一方で「地域活性化が望まれているのか?」という意見もあったりします。この場合「出る杭は打たれる」理論で、初めは逆風が吹くかもしれませんが、地域やそこに住む人にメリットが派生してくるようになれば状況は変わります。

自分なりのスタンスを決めて、地域活性化の取り組みを実行する前の設計として、地域にメリットが行く仕組みは考えておく必要があります。

大学生の地域活性化にメリットはない

アイランダーのお手伝いをしたときは、他の島のブースにも、お手伝いの大学生が多くいました。

そうした学生に話を聞くと、島の生まれでも育ちでもなく、島とのつながりで参加している人がほとんどでした(島側としては東京に人を送る費用を抑えるため、東京にいる人にお手伝いをお願いしたいという意向があります)。

私は大学で勉強したことを生かしたくて、今は沖縄で地域と深く関わる仕事をしていますが、よく思うのは「あの時の学生たちどこ行った」ということです。「あの時の学生」というのは、アイランダーのブースでお手伝いをしていたような学生たちです。

最初に述べたように、大学でも地域活性化を学ぶ機会が増えています。しかし、仕事でも、趣味で田舎を旅していても、ネットでもSNSでも、20代で地域活性化のようなことに関わっている方と出会うことはほとんどありません。

(もし出会えたら、お互いの取り組みなどを語り合うことなどをして、勉強させていただきたいです)

学生時代の「地域活性化」は、そこに携わった学生にとっての楽しかった思い出であったり、就活で話すネタのひとつになっている場合がほとんどです。

それで地域に「体験料」などが支払われていればいいのですが、基本的に地域に学生を受け入れる際は、宿泊費や食費のみで、例えば地域の人が話をしたり、何かを教える、ワークショップを行うことに対してはお金が発生しません

でもせっかく若い人が来てくれるならと、とっておきのおもてなしで迎えてくれるのが日本の田舎です。地域の人から課題などを聞いて、ちょっと手伝いをして、夜は地元の人とお酒を飲んで… 

こんなことばっかりです。ただ、学生も授業の一環ということで、一生懸命に取り組みます。だからこそ、対応に苦慮している地域が多いのです(笑) 頑張って、地域の人にも優しくしてもらった学生は「地域活性化に関わった」という達成感があるかもしれませんが、地域にとっては特にメリットがありません。

最後に

今一度「地域活性化」「地方創生」の勉強や授業について考える必要があります。大学の先生や教科書、データ、ネットから現場を知ることは出来ません。

本気で地域に関わりたいという方は、何かアドバイス出来るかもしれないので、ぜひTwitterのDMにてご連絡いただければと思います。

最後までありがとうございました。

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