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今回は「国道58号線を歩く旅」後編をお届けします。
★前回の記事は こちら ★
沖縄の闇をデータでご紹介
那覇から国道58号線をひたすら歩き、時刻は朝6時。完全に明るくなりました。
目指している本部港までは残り53km、GoogleMapの計算上は10時間40分かかる見込みです。しかし、この所要時間には休憩が含まれていません。果たして、17時過ぎに本部港を出港する那覇行きの船に間に合うでしょうか。
そういえば、今回は夜通し歩いている間、暴走族に遭遇しませんでした。沖縄の成人式が「荒れる」ことは有名ですが、沖縄本島には暴走族も未だ健在です。
宜野湾市のホームページには、市民の方から「宜野湾バイパス(国道58号線)の暴走族の騒音に毎晩、腹が立っている」というコメントも寄せられています。
沖縄の暴走族についての論文によると、暴走族少年の多くは建築現場で働いており、1週間の鬱憤を暴走行為で発散させるそうです。荒れる成人式の背景にも、毎晩のように盛り上がるゴーパチ(国道58号線)の日常があります。
沖縄本島で活動する暴走族グループは、出身中学校単位に構成されており、僻地を除くすべての公立中学校に存在するとされています。どうして彼ら・彼女らは暴走行為を行うのでしょうか。
こちらは毎年文部科学省が行っている全国学力テストの結果。小学生(6年生)は半分より上の順位ですが、中学生(3年生)は毎年全国最下位。2022年には小学生も全国最下位になりました。沖縄県の中学校教育には何らかの問題がありそうです。
教育と貧困が悪循環する経済と社会の構造
ここからは、いわゆる【沖縄の闇】を各種データをもとに考察します。
6時25分、那覇バスターミナルを5時45分に出発する、名護行きの始発バスに抜かされてしまいました。ここまで来るのにバスは40分、私は6時間25分かかっています。
2021年の沖縄県における高校進学率は97.7%。一見すると高い数字のように思えますが、全国で最も低いです(全国平均98.9%)。また2021年度の高校中退率2.1%も全国トップ(全国平均1.2%)。勉強が難しくなるにつれて、挫折してしまう子供たちが多いのでしょうか。
沖縄県の県民所得は2011年から2019年まで毎年全国最下位、母子家庭の割合2.2%と父子家庭の割合0.3%も全国1位(2020年国勢調査)。親が夜まで働いているため、勉強で分からないことを聞ける人がいないことも考えられます。
県民所得が最も低い
2020年の国勢調査によると、沖縄県の人口は約147万人。都道府県別で比べると、決して少ない数ではありませんが、他県と行き来するためには飛行機(船)というハードルがあります。
例えば、鳥取県や島根県も人口は少ないですが、岡山県や広島県、さらには関西圏にもターゲットを広げることが出来ます。沖縄県の場合そうはいきません。商業活動の範囲が沖縄県内に限定されがちです。県内向けサービスはマーケットが小さい上に県民の所得も低いため、企業が利益を上げる難易度が高く、従業員の給与は低くなります。
北海道もまた四方を海に囲まれていますが、北海道の人口は約522万人。道外へ出荷する農作物や海産物も豊富です。地域の外からお金を得るのが沖縄のあるべき姿ですが、私も日本中を旅していて、沖縄県外で沖縄県産のモノやサービスを見ることはほとんどありません。
「3K(基地・観光・公共工事)」に依存していると言われる沖縄経済。3Kにより、沖縄県は外貨を獲得出来ているのが実情です。沖縄県では第三次産業に従事している人が多く、県外へ出荷されている沖縄の野菜や魚、沖縄の工場で製造されたモノは、やはり非常に少ないことが伺えます。
有効求人倍率も毎年全国最下位。仕事が無いなら自分でやってやる!ということで、開業率も沖縄県は毎年全国1位ですが、県民所得が上がらないということは、稼ぐことが出来ていないということです。稼げるビジネスモデルでないから、求人も少ないのでしょう。首都圏では地元の会社ではなく、東京都内に電車で通勤するのが一般的ですが、そうしたこともやはり出来ず、給与の安い沖縄県内で職を探さざるを得ません。
那覇から夜通しで歩いて、朝7時になりました。本部港までは残り48km、所要時間は9時間50分。休憩なしで歩けば、ぎりぎり船の出港に間に合います。
母子家庭と父子家庭が日本一多い
出生や婚姻・離婚については、厚生労働省のデータが参考になります。
2019年に生まれた赤ちゃんのうち、「結婚期間が妊娠期間より短い=授かり婚」の割合は、全国平均が18.4%であるのに対し、沖縄は30.8%と全国で最も高いです。また、2021年は婚姻率が全国2位である一方、離婚率も全国1位となっています。
こちらは厚生労働省の都道府県別離婚件数・離婚率。沖縄県が顕著に多いことが分かります。沖縄県の離婚率は19年連続で全国1位。これに関連すると思われるのが若年層の出生率です。
人口問題研究所が算出している女性の年齢別出生率を都道府県別に比較すると、15~19歳出生率の全国平均が2.54‰であるのに対し、沖縄県は7.30‰と全国断トツ1位。20歳~24歳出生率も全国平均が23.02‰であるのに対し、沖縄県は49.68‰で全国1位です。
若くして命を授かり結婚したものの、大人になるにつれて合わない部分が増えてきて、別れてしまうというようなストーリが想像されます。そして、稼ぐ必要があっても仕事がないという悪循環。沖縄県の完全失業率も、2017年から2021年の5年連続で全国1位です。
非正規雇用が多い理由
BEGINの名曲『オジー自慢のオリオンビール』の歌詞に、「金がないなら海にが行くさ魚があれば生きられる」という一節がありますが、沖縄の生活コストは安いわけではありません。一定の現金収入が必要です。
沖縄県の物価水準を示す2021年の消費者物価指数は全国27位。食費については全国で最も高いです。これは増加する人口に対応する土地(工場や畑)が足りていないことや輸送コストの影響があると考えられます。
また、人口問題研究所が算出している、2020年の沖縄県女性の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む平均子供数)は1.83と全国1位。特に第3子以上の出生率が高く、全国平均0.22に対し沖縄県は0.54。その結果、核家族世帯の人員は3.06人(2020年)と、47都道府県で最も高くなっています。
家計を賄うため、とにかく目先のお金が必要となった人が辿り着くのは「非正規雇用」です。先ほど述べたように、稼げないビジネスモデルで正社員を雇えない会社もありますが、非正規雇用が多くなる背景には労働者側の問題もあると考えられます。
こちらは2016年の都道府県別離職率。沖縄県の離職率の高さもまた日本一です。5~29人規模の会社や宿泊業・飲食サービス業では、離職率が120%を超えており、とにかく辞めてしまう人が多いことが分かります。すぐに辞めてしまうと、労働者本人も会社もなかなか成長出来ません。
そして、沖縄県の最低賃金は全国最安です。労働者側も低い所得に慣れてしまっているため、高い給与で求人を出しても、「大変な仕事なんじゃないか」と怪しむ人が多いという話も聞いたことがあります。
まとめると、沖縄には我慢して人材を育成する余裕のある会社が少ないのです。一方、労働者も給料アップを半ば諦めています。安い給料で時間をかけて働いている親は、子どもに目が行き届かなくなり、いつの間にか孫が出来ている、そんな感じの連鎖でしょう。
学力テスト全国最下位の理由
那覇から歩き始めること約8時間、おんなの駅に到着しました!
8時間で33km歩いたということは、1時間で4kmペース。
しかし、おんなの駅から本部港までは45km、9時間もかかる計算です。流石にもう辛くなってきたことに加えて、17時の船にも間に合いそうにありません。歩くのは諦めることにしました。
今回私も深夜の沖縄を歩きましたが、沖縄の「夜型社会」も問題とされることがあります。2015年に行われた調査では、月1回以上、子連れで午後8時以降外食や買い物に出かける親が3割を超えています。
ただこれは、個人的には仕方のないことだと思います。沖縄は他の都道府県よりも西に位置しているため、年間を通じて日没の時間が遅め。明るい時間は遊んで、暗くなってから家に帰り、家族で買い物に行くのは自然なことですが、問題は暗くなってから家に帰っても、親がいなかったり、親に何も言われない場合です。
暴走行為を防ぐ手段として、「期待族」を出現させないことを挙げている論文もあります。期待族とは、暴走行為を見物して煽るギャラリーのこと。期待族がいないところでの暴走は少ないそうです。
家に帰らず、仲間と暇を持て余した少年・少女たちが期待族となり、そこから繋がりが生まれて、暴走族になることもあるのでしょう。大人の監視が無くても、子供が家で宿題をしたり、ご飯を食べたりすることが出来ればいいですが、なかなかそうはいきません。
ここに拍車をかけるのが「まーめー」という言葉。勉強を頑張っている生徒を馬鹿にする風潮があり、軽蔑的表現としてこの言葉が投げられるそうです。もちろんこれは学校の環境次第ですが、個人的には、沖縄県の中学生が全国学力テストで最下位になってしまう理由だと思っています。
ここにとどめを刺すのは、親も勉強の必要性を認識していない場合です。勉強を頑張ろうとする我が子に対し、「騙されてるんじゃないの」と声をかけることもあるとか。勉強することを馬鹿にされてしまうと、本来は勉強すべき時間が暇になり、友達に会いに行くのでしょう。
今後はスマホやゲームが一般化し、外で集まる子供は減り、暴走行為は減っていくのでしょう。今回色々と調べてみて、日本の都市部も沖縄と同様の問題を抱えるだろうなと思いました。
私はここでギブアップしバスに乗車。体力的な限界よりも、歩く旅の一番の敵は「睡魔」でした。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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