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今回は「2022年 トカラ列島旅行記」その3をお届けします。
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鹿児島県十島村 口之島上陸!
奄美大島からフェリーとしまに揺られること約10時間、トカラ列島最北端の島・口之島(鹿児島県十島村)に上陸。
日本最後の秘境と言われるトカラ列島ですが、口之島からは多くの人が乗船していました。この日は平日。十島村の中で最も鹿児島市に近い島であるため、釣り客や観光客も多いのでしょうか。そうは言っても、口之島から鹿児島市内までは船で7時間近くかかります。
フェリーとしま2が遅れていた影響で時刻は12時45分。港には予約していた宿の方が迎えに来てくれていました。
2023年3月現在、口之島には4軒の宿泊施設があります。
今回私がお世話になったのは、港の目の前にある「民宿 なかむら」さん。2016年5月にオープンした島で一番新しい民宿で、トカラ列島で唯一のダイビングショップも兼ねています。
予約していたのは2泊5食プラン(16,500円)。シャワーとお風呂は共用で、シャンプーや石鹸はありますが、タオルや歯ブラシなどは持参が必要。民宿のホームページもしっかりしているので、詳細はそちらを確認するのがおすすめです。
もちろん部屋のテレビは映り、Wi-Fiもしっかり繋がりました。ちなみに、島内でスマホの電波が繋がったのは港周辺や集落だけです。
チェックインの手続きを済ませて、まずは昼食に手作りお弁当を頂きました。これが2泊5食のうちの1食目。口之島には飲食店が無いので、宿は3食付きがスタンダードです。
こちらが1日目の夕食(2食目)。宿の主人は兼業で漁業も営んでいるということで、魚が獲れたときは新鮮な海の幸を味わえます。ボリューム満点で、さらにサービスでお酒やお菓子もサービスで出していただきました。
地理学に面白い島を歩いて観光
昼食を食べ終えたら13時30分、暗くなるまで島を歩いて観光します。
目指す先は港から2.4km歩いた先にある口之島の最北端「赤瀬」。この道中で面白い発見が色々とありました。
亜熱帯の植物が生い茂る
口之島案内図の『ごあんない』には、「ガジュマル、アコウ、ビロウ、タブノキなど亜熱帯植物が生い茂る」と書かれています。
早速バナナの木々を見つけました。フェリーとしま2でトカラ列島を北上する途中、生物地理学的な熱帯と温帯の境界「渡瀬線」を通過しましたが、口之島にはまだ亜熱帯の名残があるようです。
■ 参考:渡瀬線とは何か
沖縄の海沿いでよく見られるアダンもありました。熱帯から亜熱帯に生育するアダンの北限も口之島です。
海岸沿いに立つ1本の細い木に案内看板が設置されていました。
この木の名は「七島藺(シチトウイ)」。七島はトカラ列島の有人島の数に由来し、島内では莚(敷物)やサワラの燻製を作るときの吊り紐、草履などに使われていたとのこと。琉球畳や柔道用畳の原料として島外にも出荷されていたそうです。
黒潮が直撃する立地
沖縄や奄美で見られる亜熱帯の木々や植物が口之島でも見られる背景には「黒潮」が影響していると考えられます。
こちらは海上保安庁が出している黒潮(暖流)の流れ。2本の赤い線の間を黒潮が流れており、流れる場所は年間を通じて大きくは代わりません。口之島は黒潮の流れのど真ん中に位置しており、島の西から黒潮が直撃しているのです。
ダイビング団体PADIによると、冬でも沖縄方面と海水温が変わらないため、口之島近海には黒潮に乗って大型回遊魚が次々登場し、日本でマンタが見られるスポットの北限と紹介されています。
そしてこちらが口之島西側の海、つまり口之島に向かってくる黒潮の様子です。この黒潮によって南方の温かく湿った空気が運ばれて来るため、亜熱帯の植物にとっても居心地がいいのでしょう。
そんな島の西側に口之島で唯一の海水浴場・平瀬海水浴場があります。綺麗に四角く掘られており、自然のビーチではないことは明らかですが、黒潮をこれだけ間近に体験することが出来る場所は他にありません。
海水浴場のそばにはお手洗いもあり、この日はここでテントを張っている方がいました。
溶岩ドームで出来た火山島
海水浴場の砂は黒っぽく、サンゴで出来た沖縄や奄美の白砂とは全く異なります。気象庁のホームページで「溶岩ドームの集合した火山島」と紹介されている通り、口之島は火山の影響を受けているため、砂も黒い溶岩が砕けて出来たものです。
こちらは別の場所から撮影した口之島の港。桟橋の向こう側は急峻な崖のようになっていますが、これが口之島のスタンダード。集落もまた海から離れた山の上に位置しています。
火山の島ということで、島の最北端へ向かう道はこんな感じ。アップダウンが激しく、建物はもちろん、電柱や電線もない大自然の中を歩きます。
緑の中に気配を感じたと思ったら、黒い大きな物体が動いていました。
正体は牛です。島のあちこちで黒毛和牛の放牧が行われているのは、沖縄や鹿児島の島々では定番の光景と言えるでしょう。
■ 参考:人より牛が多い島も多い
こうした植物が生い茂る道でも…
牛が脱走し、海へ滑落することがないように、しっかりと鉄柵に囲まれています。なお、放牧の範囲が広大で、鉄柵にも限界があるため、道路を散歩している牛に出会うことがあるかもしれません。
トカラ列島最北端の地でトカラ海峡を見る
歩くこと約30分、口之島最北端「赤瀬」に到着しました。
トカラ列島(十島村)最北端に位置する口之島の最北端なので、ここがトカラ列島の最北端でもあります。
この先はもう道がありません。
地名の通り先端には赤っぽい岩があり、その先がまさに黒潮の本流。口之島とその先に浮かぶ屋久島の間は「トカラ海峡」と呼ばれています。
トカラ海峡の向こうにうっすらと見えるのは「屋久島」かと思いましたが、これは恐らく口永良部島。そして、トカラ海峡もまた地理的に面白い場所です。
黒潮(暖流)が運ぶ温かく湿った空気が、屋久島の山々にぶつかることで雲が発生し、屋久島には多量の雨がもたらされています。口之島にも黒潮が直撃していますが、島の最高地点は628mなので、雲が発生するには至りません。
■ 参考:屋久島で雨が多い理由
別の場所に移動すると、口永良部島(左)と屋久島(右)も見えました。まさにこの海が上の図の現場。そう思うと、曇った海の景色も感慨深いものでした。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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