生産量が多くても「売れていない」沖縄の果物。知られてないだけ?買ってもらうための課題とは ~観光アイデア教科書Vol.10~

観光アイデアノート

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下の写真は沖縄の道端で撮ったもの。沖縄県ではバナナの木をあちこちで見ることが出来ます。沖縄県のバナナ生産量は日本一です

ところで、沖縄県産のバナナがスーパーで販売されているのを見たことがありますか?

ということで、今回は「生産量は多くても売れない沖縄の果物。知られてないだけ?買ってもらうための課題とは」を考えていきます。

バナナ

まずは引き続きバナナについてですが、 バナナは日本人に最も人気がある(年間消費量がトップ)果物。 日本のバナナの総輸入量は約104万5千トン(2019年)。それに対して、沖縄県のバナナ出荷量は168トン(2016年)と、日本一の生産量といっても、輸入される量に比べてかなり少ないです。沖縄県産バナナのほとんどが、県内向けに出荷されているようですが、沖縄県内でも沖縄県産のバナナを見ることはあまりありません。

バナナが日本人に人気であれば、もっと収穫量を増やせばいいのでは?

バナナは根が浅いため、台風の影響を受けやすく、沖縄県のバナナ収穫量は年によって増減が大きくなっています。つまり、規模を拡大すると収穫量は増えるかもしれませんが、一方で投資に対するリスクも増加するのです。

作ることが出来れば高く売れるバナナですが、日本全体、そして沖縄県でもバナナの収穫量は多くないので、害虫や台風対策についての指導もないそうです。

★こちらの方のnoteが参考になります★

【週末投稿】四季がある日本のバナナ #13(強風に逆らえない運命)|PinguBanana|note
バナナの葉は、大きな葉で太陽の光を効率よく受け取ることが出来る。しかし巨大な葉ゆえに、突風をまともに受けるとその力はバナナ株を倒してしまう程になる。もともとバナナの根は地中深く伸ばさず、広く浅く根を張る事も強風に弱い原因でもある。 日本における台風の経路は、不思議なくらい日本列島に被害を与えたいような経路でカーブしな...

ちなみに、バナナの大規模栽培が行わているフィリピンにも台風は上陸します。2012年には台風上陸の影響で、ミンダナオ島のバナナ生産量の4分の1が被害を受けました。フィリピンのバナナ栽培では、生産者の劣悪な労働環境や人権問題も発生しています。

★エシカルバナナ・キャンペーン★

エシカルバナナ・キャンペーン
日本にやってくるすべてのバナナがエシカル(倫理的)なものになることを目指すキャンペーン。生産・流通のすべての行程で破壊・排除・搾取がないことを目指します。

さらに、農家さんに聞いた話によると、沖縄県ではバナナの「窃盗被害」も多いそうです。

パイナップル

日本でバナナの次に輸入が多い果物はこちら。

パイナップルです。バナナと同様にフィリピンからの輸入量が多いです。そして、パイナップルの生産量も沖縄県が日本で一番多い、というよりも、日本で栽培されるパイナップルのほぼ100%が沖縄県産です。

輸入されているパイナップルの総量が約16万トンであるのに対して、沖縄県のパイナップル生産量は約7300トン。バナナほどの少なさではありませんが、沖縄県産のパイナップルをスーパーで見たことはありますか?

オンラインストアでは沖縄県産のパイナップルが高値で取引されている場合もありますが、パイナップルといえば外国産というのが、日本では当たり前になっています。

ちなみに、バナナもパイナップルも、フィリピンからの輸入が多いのは、他の一大産地(南米など)よりも、日本との物理的な距離が近いからです。

パイナップルが地面から生えていることもご存知でしたか?これだけメジャーなフルーツで、しかも日本で栽培されていても、沖縄に1千万人の観光客が来ていても、その生産過程や畑の様子はほとんど知られていません。

もちろん、果実が実るまでに2年~3年ほどかかるということも。

沖縄県名護市には「パイナップルパーク」という観光施設もあり、沖縄のパイナップルについて知ることが出来るだけでなく、パイナップルワインなど、加工品やお土産も充実しています。

★パイナップルパークに行った時の様子★

私も以前、パイナップルの苗を植え付けるイベントに参加しました。沖縄に住んでいる人が集まるイベントでしたが、参加された多くの方が「初めてパイナップル畑に来た」と話していたのが印象に残っています。

★パイナップルの苗を植え付けました★

沖縄はトロピカルフルーツの宝庫

沖縄県では他にも、アセローラ・アテモヤ・グアバ・ドラゴンフルーツ・シークワーサーといった、亜熱帯気候を生かしたフルーツ栽培が行われており、これらの収穫量は日本一です。パッションフルーツとパパイヤは全国2位の収穫量となっています。

★アセローラ収穫体験★

★シークワーサー収穫★

これだけフルーツ栽培が盛んであるにも関わらず、沖縄県産のフルーツが県外に出回ることはなく、旅行雑誌などで「おすすめ沖縄フルーツ!」というような特集が組まれることはありません。

沖縄県内でしか知られていないのです。

と、言いたいのですが、残念ながら沖縄に住んでいる人にも知られていない可能性が高いです。沖縄県の県庁所在地・那覇市の一世帯当たり果物消費量はダントツで全国最下位となっており、46位の熊本市より1kg以上も少ないです。

果物の認知度と消費量に必ずしも関連があるとは言えませんが、「知られていないから買われていない」ということも十分考えられます。

どんなにいいものを作っても、その存在を知ってもらって食べてもらわないと、農家さんは生活することが出来ません。

また那覇市の人口は約32万人、沖縄県全体の人口も約146万人。胃袋の数は限られているので、沖縄県外の人にも沖縄県産のフルーツを知ってもらって、買ってもらう必要があります。

沖縄のマンゴー問題

ここまで沖縄県で栽培される様々な果物をご紹介しましたが、忘れてはならないのが「マンゴー」です。沖縄県はマンゴー生産量日本一。国産マンゴーの4割以上が沖縄県で生産されています

しかし、沖縄県の外に出ると、マンゴーといえば宮崎県です。とある大学の学生を中心に行ったというアンケートでは「一番に思いつくマンゴーの産地はどこ」という質問に対し、51%の学生が【宮崎県】と回答したそうです。

実は、こちらのアンケート調査が行われた、とある大学というのは「沖縄国際大学」。沖縄県内の大学です。つまり、マンゴー生産量日本一の沖縄県内でも、「マンゴーといえば宮崎」が定着しています。

下の表は沖縄県産のマンゴーについて、数字でまとめたものになります。

まずは左側、東京中央卸売市場における、宮崎県産マンゴーとの比較です。マンゴー生産量日本一の沖縄県ですが、東京での取扱量は宮崎より少なく、かつ単価も低くなっています。その結果、市場での金額シェアは宮崎県が7割を超えています。

せめて沖縄県内での需要があればいいのですが、右の表をみると、沖縄県で収穫されたマンゴーのうち、4分の3が県外へ出荷されていることが分かります。販売量と販売額から、1kgあたりの単価を出すと、県外向けの方が安くなっています

単価が高い沖縄県内については、先ほどもご紹介した通り需要が限られています。

つまり、沖縄県で栽培されたマンゴーは、県外では宮崎産に勝てず、県内でもあまり売れていないことが伺えます。

宮崎のマンゴーが沖縄よりも高く売れる理由

1993年、マンゴー農家280人で構成される「宮崎県果樹振興協議会亜熱帯果樹部会」が発足しました。当時、マンゴーの国内シェアは9割以上が沖縄県産。宮崎のマンゴーは県内出荷がほとんど。果樹部会は「宮崎はひとつ」を合言葉に、農家・JA・県が一体となって、栽培技術確立や販売拡大を目指すための組織でした。

沖縄県産と宮崎県産でマンゴーの品質は変わらない一方で、現在の東京中央卸売市場では、宮崎産のマンゴーが沖縄県産の2.5倍の値段で取引されています。その背景には、大きく3つの理由があるとされています。

太陽のタマゴのブランド認証

1つは1998年、JA宮崎経済連が定める「商品ブランド認証基準」をクリアした完熟マンゴーに【太陽のタマゴ】の称号が与えられるようになったことです。糖度や大きさなど、一艇の基準を満たすマンゴーは全体の15%程度。その希少性から、太陽のタマゴは手に入りにくいマンゴーとなり、価格も高騰しました。

そして、太陽のタマゴが手に入らないとなったとき、選ばれたマンゴーは、安い沖縄県産ではなく、認証は受けていなくても比較的高い宮崎県産だったのです。

出荷時期をずらした

2つめはマンゴーの出荷時期をずらしたことです。沖縄県産マンゴーの出荷時期は7月から8月。この時期はマンゴーの流通量が増加し、価格が下がります。

宮崎県ではマンゴーの加温栽培を行い、出荷時期を4月に早めることに成功しました。それにより父の日や母の日、お中元などの「贈答品」として扱われるようになり、マンゴーの単価が上がりました。

東国原知事の就任

そして3つめが東国原知事の登場です。話題性のある知事のPRにより、宮崎県産のマンゴーは全国区になりました。ただこのときも、安売りすることはせず、富裕層をターゲットに高付加価値で売る戦略が取られました。

組織化・ブランド化が遅れた沖縄県産マンゴー

宮崎県産のマンゴーが組織化によってブランド化、高単価での販売に成功した一方で、沖縄県では2012年にようやく、一定の基準が設けられた「美らマンゴー」が商標登録されました。その認証基準は「太陽のタマゴ」より高いものの、【マンゴーのブランド化】という発想がすでに宮崎圏の後追いで、沖縄県産マンゴーの市場評価を上げるには至っていません。

沖縄県でマンゴーの組織化・ブランド化が遅れたのは、明治時代から、個々の農家が創意工夫によって栽培を行っており、それぞれの意向を汲み取ることに時間がかかったためです。観光業界もそうですが、沖縄県では様々な業界で、個々や小さな組織が点在しており、それらが連携するような例はあまりみられません。

★マンゴー農家さんの見学★

沖縄県の果物を知ってほしい!買ってほしい!

亜熱帯ならではの農作物があったり、本土は異なる時期に野菜を収穫出来たりする沖縄県の農業。しかし、小規模な農家さんが多く、販売農家(経営耕地面積が30a以上、又は調査期日前1年間における農産物販売金額が50万円以上の農家)の数は全国で6番目に少ないです。

そうした農家さんたちの連携・組織化によって、栽培技術の向上やブランド化を目指す動きも遅れています。現状では個々の農家さんがそれぞれ自力で売っていくしかありません。

ただ、県外への出荷は、送料も付いて値段が高くなり、売るのがより難しくなります。一方で、沖縄県内でもなかなか売れない… つまり、単なる増産支援をしても、需要に広がりがなく、価格の低下を招くことになります。

まずは知ってもらうこと、そして買ってもらうこと。そこから口コミが広がり、状況が変わる(高くても売れる)かもしれません。ぜひ、沖縄県のフルーツ、ひいては農業に注目してみてください!

★沖縄県でモノを県外に売るのが重要な理由★

★参考★
農林水産省 消費者相談
第5章 果樹生産の現状 – 沖縄県
平成 30 年度 沖縄振興実現調査 「沖縄における希少作物の産地化 及び観光資源化検討調査」 調査報告書
平成30年産パインアップルの収穫面積、収穫量 及び出荷量(沖縄県)
豊見城市におけるマンゴー生産とその認知度

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