おがさわら丸の見送りが盛大である理由~移住者とリピーターが紡ぐ小笠原文化|2025 旅行記8

島旅

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今回は「2025年 小笠原諸島に育休移住してみた」その8をお届けします。

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おがさわら丸の見送りが盛大である理由

2025年4月22日、育休移住9日目は小笠原諸島・母島を日帰りで観光しました。

さらば母島。母島にも0歳児連れで泊まれる宿はあり、予約も空いていましたが、ははじま丸の運航スケジュールの関係で2泊必要でした。島内には公共交通がなく、移動手段がなければ基本は集落周辺の散策程度。個室でゆっくり過ごすのも悪くありませんが、少し退屈になりそうな気もしました。

母島の北部

今回は父島に滞在していたこともあり、行動の幅を考えて日帰りを選択。またいつか、母島メインでゆっくり滞在してみたいと思います。母島から父島までの所要時間は2時間です。

父島のハートロック

船の揺れもそれほど大きくなかったので、前田商店で買ったビールを片手にデッキでのんびり過ごします。

海風を浴びながら、しばし船旅を満喫。それにしても、かなり日焼けしました。この時期でも父島や母島を歩くなら、日焼け対策は必須。火照った身体に吹きつける海風が心地よく感じられます。

残念ながら、帰りはクジラの姿を見つけることは出来ず。その代わりというわけではありませんが、船と一緒に飛んでいた海鳥のフンが、なんと妻の肩に直撃するという珍事が発生。。普段から魚を食べている鳥らしく、臭いはなかなか強烈でした。

16時、父島に到着しました。例によって、翌日はおがさわら丸が父島を出港するので、夜は小笠原ユースホステルの出港パーティー。人数が少ないかつほぼリピーターということで、バーベキューが開催され、楽しい夕食の時間を過ごすことが出来ました。

■参考:1人旅は小笠原ユースホステルがおすすめ

盛大なお見送りは小笠原の名物

2025年4月22日、育休移住10日目はおがさわら丸の出港日です。

船の出港は15時。いい天気になりましたが、前日に母島でたくさん歩いたので、日中はのんびりと過ごしていました。この「いい天気なのに何もしない」という時間を過ごせるのが長期滞在ならではの贅沢。一航海だと小笠原(父島)の島時間はあっという間に過ぎ去ってしまいがちです。

■参考:出港日にも半日ツアーがある

おがさわら丸の船尾には国旗が掲げられている

そして14時半前には港へ。出港まで30分以上ありますが、これから船に乗る人と、そのお見送りをする人たちで、港にはすでに多くの人達が集まっています。そして、あちこちから聞こえてくるのは「行ってらっしゃい」という声です。

海上保安庁のマスコットキャラクター「うみまる」もお見送り

小笠原では「さようなら」という言葉はあまり使われません。島を離れる人には「行ってらっしゃい」と送り出し、島に戻ってきた人には港で「おかえりなさい」と迎えます。初めて小笠原を訪れた人は、「なぜ“おかえりなさい”なのだろう」と不思議に思うかもしれません。

出港時刻が近づくと、「ぼにん囃子」による出港太鼓が披露されます。これは基本的に毎便行われる恒例行事です。その間、小笠原ユースホステルのメンバーは全員で記念撮影。

そして15時、おがさわら丸はモクモクと黒煙を上げて、東京へむけて旅立ちました。そして、おがさわら丸の横には見送り船が次々と並走し、見送り船から海へ飛び込む、通称「見送りダイブ」をする人もいます。

ちなみにこちらが以前、お見送り船に乗船した時の様子。おがさわら丸による引き波の影響を受けるので、見送り船も揺れ、ダイブはなかなか危険です。そのため、見送り船団の一番後ろでは、海上保安庁の船が安全を監視しています。

青灯台にも引き波は来る

一航海目は青灯台からお見送りダイブをしたので、今回は岸壁からシンプルに見送ることに。こうしたおがさわら丸の見送りはひとつの名物になっていますが、そもそもなぜ毎便ここまで盛大にお見送りが行われるのでしょうか

■参考:一航海目のお見送りの様子

見送りが盛大な理由

理由のひとつは、やはり船の運航頻度でしょう。おがさわら丸は6日に1便。島にとって船の出入りは特別な出来事であり、出港の日は自然と節目の一日になります。

もうひとつは、島の滞在スタイルです。多くの旅行者は3泊4日(1航海)を同じ宿で過ごします。小笠原には小さな宿が多く、朝食や夕食の場面で宿泊者同士が顔を合わせる機会も少なくありません。ツアーや飲食店も比較的少人数です。

小笠原ユースホステルのメンバーをお見送り

島自体もそれほど大きくないため、観光していると「名前は知らなくても顔は覚えている」というような人が出てきます。数日の滞在でも、旅人同士の「顔見知り」が生まれていくのです。人と人との距離が少しだけ近いのが、自然に勝る小笠原らしさと言えるかもしれません。

さらに、小笠原という場所そのものも関係しています。本土からは船で約24時間。往復を含めると5泊6日ほどの時間が必要になり、国内旅行としては決して気軽な旅ではありません。それでも訪れる人たちは、海や自然、島の暮らしに魅力を感じてやって来ます。

■参考:小笠原諸島はつまらない?

アクセスというハードルがフィルターとなり、似たような趣味や価値観を持った旅行者が集まりやすい傾向があるのです(私の感覚)。そうした環境の中では、人と人との距離も自然と近くなります。もし誰とも話さずに帰ってしまったとしたら、たとえ見送りに感動しても、再び小笠原を訪れることはないでしょう。

移住者とリピーターが紡ぐ文化

出港を見届けた後、小笠原ユースホステルに残る人たちはウェザーステーションへ向かいます。

西に沈む太陽の光を鏡で反射させ、おがさわら丸へ届ける「光通信」は、小笠原ユースホステル名物の粋なお見送りです。距離はありますが、意外と光は船まで届きます。リピーターが乗っていると、船の上からも鏡で光を返してくれることがあります。

こちらはおがさわら丸から見た光通信。小笠原に通うようになると、「次は見送る側になりたい」と思う人も少なくありません。実際、見送り船に乗ったり、ウェザーステーションから光通信したりするのは、2航海以上滞在する人の特権とも言われています。

クジラのブロウ(潮吹き)を見ることが出来ました

この見送りの光景に心を打たれ、小笠原のリピーターになるだけでなく、移住してしまうことも少なくありません。そして島民として船を見送る―――そうした人の循環の中で、お見送りの文化は受け継がれてきました。小笠原の見送り文化を支えているのは移住者とリピーターです。

海上保安庁の船も見送ってくれる(帰りに撮影)

特に盛大になるのが年度末です。進学や転勤などで島を離れる人が多く、見送りの人数も増える時期。小笠原は移住者の多い地域でもあり、人の出入りの多さが、この文化をより強いものにしています。そして、この島に戻ってくる人が多いからこそ、「おかえりなさい」という言葉が似合うのかもしれません。

育休移住に小笠原ユースホステルを選んだ理由

光通信を終えて一旦宿に戻り、もう一度ウェザーステーションへ。今度は夕陽を見に来ました。

最近は宿のトレンドは「個室」ですが、私は「相部屋」の宿がいいなと思います。よほどの絶景が部屋から見えない限り、部屋の豪華さに感動するのは最初の数分ほど。しばらくすると、自宅にいるのとあまり変わらない感覚になってしまいます。

もちろん、相部屋では気の合う人ばかりとは限りません。時には少し気になる人と同じ空間になることもあるでしょう。それでも、さまざまな人と同じ宿で時間を過ごすことで、自然と会話が生まれることがあります。

■参考:ゲストハウスの失敗体験記

小笠原ユースホステルは年季が入った建物で、決してきれいな宿というわけではありません。それでも、相部屋という環境によって、旅行者同士が知り合いになるきっかけが生まれやすいのです。何より、子どもにとっても多少なりとも刺激になるはず。

こうして夕陽を眺めたりしながら、旅行者同士が同じ時間を共有することになり、宿での出会いがそのまま旅の思い出を形づくっていきます。

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今回はここまで。本日もありがとうございました。

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