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今回は「2025年 公共交通機関で行く 北海道の旅」その13をお届けします。
★前回の記事は こちら ★
礼文島 桃岩荘ユースホステルに宿泊
2025年8月14日の14時過ぎ、稚内駅にやって来ました。この日は礼文島に向かい、「桃岩荘ユースホステル」で2泊する予定です。

桃岩荘のロケーションはこんな感じ。毎年6月1日〜9月30日の期間だけ営業していることに加えて、館内が動画撮影禁止ということもあり、知名度の割に外に出回っている情報は多くありません。果たして、どんな体験が我々を待ち受けているのでしょうか。
アクセス:ハートランドフェリーで稚内から礼文島へ
礼文島行きのフェリーが出る稚内港フェリーまでは、駅から徒歩約10分。宿の近くに飲食店や商店は無いので、途中にあるセイコーマートで食料を調達。なお、0歳の我が子の食事は、ベビーフードを持参しています。

14時30分、稚内港フェリーターミナルに到着。稚内〜利尻島〜礼文島を結ぶハートランドフェリーには3隻の船があり、今日乗船するのは2003年就航の「ボレアース宗谷」です。
■参考:冬のハートランドフェリーに乗船


こちらが2等室。座席はなく、雑魚寝タイプのシートです。夏季の定員は550名と大きな船ですが、この日は混雑しており、空いているスペースがほとんど見当たりませんでした。

まだ0歳の子どもを連れているので、我々は2等優先席の区画を利用させてもらうことに。

14時50分、ボレアース宗谷は稚内港を出港しました。稚内の西方約60kmに浮かぶ礼文島までは、左手に利尻富士を眺めながら約2時間の船旅。2等室の運賃は3,950円です。

お昼寝の時間帯であることと、船の心地よい揺れで我が子も両親もよく眠り、目覚めると目の前には礼文島が近づいていました。約300種類もの花が咲き乱れることから、「花の浮島」とも呼ばれる島です。
しかし、我々は島に咲く花を見たくてここまで来たのではありません。目的は「桃岩荘」です。港に近づくと、旗を大きく振り回して船を出迎えている方々の姿を発見。思わずニヤリとしてしまいました。

礼文島・香深港には定刻通り16時45分に到着。日本人が暮らす有人島としては最北に位置する島です。今回で3度目の上陸となりますが、桃岩荘に泊まるのは初めてです。
■参考:初めて礼文島に上陸したときの旅行記


下船し、旗を振ってお出迎えしてくれた方々のもとへ向かいます。ここでチェックインを済ませ、他の宿泊者が全員揃ったら、ワゴン車に乗り込んで宿へと移動です。
宿の送迎で香深港から桃岩荘へ
チェックインから独特のノリで迎えられるのかとドキドキしていましたが、さすがにまだ普通の対応です。むしろスタッフの方々は、丁寧すぎるくらい親切に対応してくれました。

しかし、車のドアが閉まったところから桃岩ワールドがスタート。どうやらこの車は、全員で元気よく「発車オーライ」と言わないと動かないそうです。
港から宿までは車で約10分。移動中は各々の簡単な自己紹介タイムです。桃岩荘に泊まるのは全員が今回初めてで、我々以外は、テレビで見て興味を持って訪れた方たちでした。我々が桃岩荘を知ったきっかけはまた後ほど。

こちらが噂の新桃岩トンネル。全長約1.5kmのトンネルを通る間に、己の教養・知性・羞恥心を捨てるよう促されます。そして帰る時には、忘れずに拾って持ち帰るのがルールなのだそうです。

17時15分、ついに桃岩荘に到着。荷物はスタッフの方々が運んでくれるので、我々宿泊者は玄関の前に集まるよう指示されます。そして、スタッフの方の合図でドアを開けると…

「おかえりなさいませー!!!」という盛大なお出迎え。これに対し、大きな声で「ただいま!」と返すのがお約束です。ずっと噂に聞いていた光景に、笑いが止まりません。
館内の設備をご紹介
宿泊料金はユースホステル会員料金で1泊3,750円。支払いは現金のみで、連泊の場合もまとめて精算するのではなく、1泊ごとに支払う仕組みです。

この日の精算を済ませて、ヘルパーさんから簡単に館内の紹介を受けたら、いったん解散。時刻は17時55分になりました… あら?時間がズレている?

桃岩荘には、日本標準時よりも30分早い「桃岩時間」が流れています。館内の時計もすべて30分進んでおり、宿泊者は桃岩時間に従って動くのがルールです。

こちらが共有スペース、通称「いろりの間」。2階の通路沿いに男性用のベッド(2段ベッド)が並び、女性用の部屋は共有スペースから離れた場所に設けられています。

建物の原型となっているのは、かつてニシン漁の拠点として使われていた鰊番屋。定員は40名、スタッフの方々を入れると50名以上を収容することができます。思っていたよりも大きな施設でした。

こちらが私のベッド。ドミトリー形式で、右・左・下と三方に他の宿泊者がいる状態ですが、それぞれ仕切りが設けられています。なお、コンセントや照明はありません。

スマホ等の充電は、通路にあるコンセントを皆さんで譲り合って使うスタイルです。

有料の洗濯機もあります。

こちらは食堂。ただし桃岩荘は素泊まり専門で、食事の提供はありません。食料は原則持参ですが、アルコール類は持ち込み不可(全館禁酒・禁煙で、ノンアルコールビールも含む)。

ポットのお湯があるのでカップ麺は作ることが出来ます。冷蔵庫や電子レンジ、トースター、お皿なども自由に使えるものの、コンロなどの調理設備はありません。

なお、カップ麺やスナック菓子、飲み物などは、館内にある売店「ブティック ぶたなすび」でも購入可能。この売店では桃岩荘のオリジナルグッズも販売されています。

食堂からの景色は、素晴らしいオーシャンビュー。記憶が少し曖昧ですが、確か朝は8時まで、掃除が終わる昼から夜にかけては自由に使えたはずです。

こちらは食堂の横にあるお風呂場。男女別の2部屋にそれぞれシャワーが2つあり、浴槽にもお湯が張られています。ただ、宿泊者が多いのでなかなか空きません。利用時間は16時から22時まで。脱衣所には備え付けのドライヤーもあった気がします。

ということで、宿泊施設としての基本設備は整っていますが、以下2点は注意が必要です。
- エアコンや扇風機がない(朝晩は涼しいが日中は25度を超えることも)
- テレビやWi-Fiはなく、私のワイモバイルは圏外
歌って踊るミーティングに参加
夕食とシャワーを済ませ、いよいよ19時半(日本標準時19時)になりました。桃岩荘の名物「ミーティング」が始まります。

どうやら毎年8月12日から16日の5日間は、桃岩荘の恒例イベント「桃岩荘フェス」の期間中で、この5日間だけの特別なミーティングが開催されているそうです。今夜のテーマは「プチ唄いまくり」。

まずはスタッフ(以下ヘルパー)の方による礼文島の観光案内。ネタがたくさん盛り込まれていますが、こちらは笑って聞いているだけでよく、無茶ぶりなどはありません。

その後は、ヘルパーさんたちによる熱唱タイム。桃岩荘では、毎年「今年の歌」を作っているそうです。1967年のオープンから約60年、ヘルパー陣も毎年入れ替わる中で、これまでの歌がどうやって受け継がれてきたのかは分かりませんが、この日は歴代の「今年の歌」が次々と披露されました。

いろりの間の頭上の壁には、ミーティングで歌う定番の曲たちの歌詞カードが掲載されています。

宿泊者はしばらくヘルパーさんたちのパフォーマンスを座って見ているだけでしたが、ついに我々も歌って踊ることに。その場にいる全員で、「アラレちゃん音頭」「およげ!たいやきくん」「ひょっこりひょうたん島」「どんぐりころころ」などの昭和の名曲を、歌いながら踊りました。もちろん皆さんしらふです。

続いてはスペシャルゲストの紹介。まずは桃岩荘の名物「愛とロマンの8時間コース」を歩いた人たち。桃岩荘によって開拓されたとされる約30kmのトレッキングコースで、Wikipediaでも紹介されています。

続いてのスペシャルゲストは、この日お誕生の方。スペシャルゲストとして紹介された方は全員の前で【一言+桃岩荘の名物「ギンギンギラギラダンス」】を披露することとなります。

そしてまた全員で歌って踊る。この日のテーマが「プチ唄いまくり」なので、ヘルパー陣が熱唱したり、全員で歌って踊ったりする時間が多く、どうやら普段のミーティングとは少々違うようです。

ミーティングは2時間で終了。時刻は桃岩時間で21時半となりました。30分後の消灯を前に、皆さん急いで歯磨きに向かいます。ただ、この30分の間に「愛とロマンの8時間コース」の説明会が食堂で開かれるとのことで、我々はそちらに参加することにしました。

8時間コースの概要は以下の通り。なお、8時間コースを歩く場合は、この説明会への参加が必須となっています。
- ガイドさんは付かないが、桃岩荘のメンバーは一緒に行動するように
- 指定の場所で必ず桃岩荘へ電話をするように(計4回)
- 持ち物はなくてもレンタル可能
- スタート地点までのバス代は自己負担(バス停があるセイコーマートまでは送迎あり)

しかし、説明会の時点で、ここ数日の雨で滑りやすい、かつ気温が上がる予報のため、明日はおすすめしないという案内がありました。私も説明会の参加者の様子を見て不安になったので、今回は見送ることに。

その後、しばし団らんの時間があり、22時に消灯。桃岩荘1日目が終了しました。ちなみに、我々が桃岩荘を知ったきっかけは以前泊まった小笠原ユースホステルです。

桃岩荘と小笠原ユースはよく比較される宿で、小笠原の出港パーティーで桃岩荘の「ギンギンギラギラダンス」が披露されることもあります。今回の桃岩荘でも、ギョサンや小笠原のトートバッグを身につけた宿泊者を、あちこちで見かけました。
■参考:小笠原ユースホステルに宿泊

カフェで過ごす静かな朝からの…
2025年8月15日、桃岩荘2日目の朝を迎えました。

起床は桃岩時間で6時30分ですが、それよりも1時間早く起きて向かったのは「Ben&Joe House」。

桃岩荘の敷地内にあるカフェで、起床前と午後のティータイムに営業しています。ただし、座席は少ないので10名程度の先着順。また、こちらの店員さんもヘルパーさんたちです。

注文したのはピザトースト(コーヒー付き)800円。飲み物以外のメニューは、ピザトーストとレアチーズケーキ(500円)だけです。それでも、窓から海を眺めつつ、他の宿泊者の方とおしゃべりを楽しみながら過ごす時間は、なんとも心地よいものでした。

リピーターの方から「初めてなら起床は体験した方がいい」と言われ、一旦自分のベットへ。そして6時半、爆音の「石狩挽歌」とヘルパーさんによる朝の挨拶が館内に鳴り響きました。これが起床の合図です。

起床したらチェックアウトの人は7時までにベッドを空け、連泊する人は7時までに宿泊費の支払いを済ませる必要があります。

我々は2泊の予定でしたが、空きがあるということで、このタイミングで延泊を決めました。なお、連泊予定で7時までに支払いが無い場合、放送で呼び出されるので、早起きは必須といえるでしょう。

続いては、8月限定で桃岩時間の7時から始まるラジオ体操。日本標準時では6時半、NHKラジオから流れる音源に合わせて、桃岩荘のテンション高さで身体を動かします。

7時半過ぎ、朝一番の船に乗るため、歩いて港へ向かう人たちのお見送りです。ただ黙って手を振るのではなく、歌いながらの盛大なお見送り。

港まで車で送迎するサービスもあるのですが、このお見送りを受けたくて、荷物だけ預けて自分の足で港まで歩く人が多いそうです。背中が見えなくなるまで、大声で歌い、そして「いってらっしゃーい」と叫びます。

そして、見送りが終わったら全員で一本締め。しかし、朝のルーティンこれで終わりではありません。

続いては、いろりの間の掃き掃除と雑巾がけ。これもまたヘルパーさんが盛り上げてくれるのですが、参加している人は少なめです。というのも、このあと港へ移動して、船の見送りをするため、この時間に朝食を済ませておかないと、食べるタイミングが無くなります。
ヘルパーと宿泊者による盛大なお見送り
日本標準時8時55分発の稚内行きの船には、桃岩荘のヘルパーと宿泊者による盛大なお見送りがあります。

見送りをしたい人は、宿の車で港まで送ってもらえますが、私は我が子を抱えて港までの約4kmを歩いてみることに。この海沿いの道が、桃岩荘に通じる唯一のルートです。アップダウンもあるので、赤ちゃんを抱えての徒歩はなかなか堪えます。

ただ、道中の新桃岩トンネルは照明があり、歩道も整備されているので、その点は安心して通れました。

45分ほど歩いて港に到着。休む間もなく、歌って踊りながら船のお見送りが始まります。何も知らなければ、島の人による感動的なお見送りに見えますが、これも実は桃岩荘の儀式のひとつ。ヘルパー陣も夏季限定で島に住み込んで働いているので、島民はほぼいません。
■参考:小笠原の盛大なお見送り

桃岩荘の予約は電話のみ。我々の予約時は、確認事項の多さから通話が約10分に及びました。それだけ、現代の一般的な宿とは違うルールや文化が息づいている…というより、もはや「宿」ではなく「体験型施設」と呼んだほうがしっくり来る場所です。島の変わった「奇祭」に参加するといってもいいでしょう。

宿泊者の評価は「合うか合わないか」で分かれますが、何かを強制されることはありません。強いて言えば、朝は爆音の音楽で叩き起こされること、消灯時間があることくらい。例えば、ミーティングに参加せず、夜に散歩へ出かけるのは自由です。

夏の礼文島に来る船は1日4便(利尻航路含む)。桃岩荘は収容人数も多く、出入りも多いので、全員の顔を覚えるのは難しいです。宿泊者同士の会話も少ないので、ミーティングに参加しなかったり、途中で抜けたりしても咎められることはなく、そもそも気付かれない、というのが実情かもしれません。

お見送りが終わったらまた1本締め。

そして、この朝の船で稚内からやって来て、桃岩荘にチェックインする方のお出迎え。日本標準時でまだ9時半前です。忙しすぎる朝の桃岩荘でした。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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北海道・礼文島の「桃岩荘ユースホステル」に実際に宿泊した体験を紹介。動画撮影禁止の館内だからこそ気になる設備や、名物ミーティングの様子、宿の雰囲気を詳しくレポート。桃岩荘はどんな宿なのか、初めて宿泊する人向けに見どころや注意点もまとめました。


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