日本で最大の面積を持つ都道府県と言えば北海道。その面積は九州の2倍強、四国の6倍弱にもなり、国土面積の22%を占めています。
■ 参考:1
こちらは新千歳空港駅にある北海道と本州の大きさを比較した図。この図を見ると、小樽や札幌は本州の日本海側、根室や釧路は本州の太平洋側にあたることが分かります。ということは、1年間の気候も全く異なるはず。今回は気象庁が出しているデータを基に、北海道の気候について調べてみました。対象とする地域は余市・函館・札幌・旭川・網走・帯広・釧路・稚内の8か所です。
気象庁のデータをもとに北海道の気候を調べてみた
今回対象とする地域の位置関係は以下の通り。
北海道の南にある函館市と北の稚内市の直線距離は約630 km。東京から岡山までとほぼ同じ距離です。また、緯度にすると函館が北緯41度、稚内が北緯45度なので4度の差があります。南北にこれだけ離れていると、函館と稚内ではどれだけの気温差があるのでしょうか。
北海道で一番寒いのは釧路?
道内各地の平均気温をまとめた表がこちら。
年間の平均気温が10度を上回る都市は無く、やはり「北海道は寒い」ことが分かります。ただ、函館と稚内の年間平均気温の差は2.4度と、それほどインパクトのある数字ではありません。そもそも、年平均気温が最も低いのは、最北の地・稚内ではなく【釧路】なのです。
年間平均気温から分かる釧路の気候的特徴は以下の通り
- 夏の平均気温が20度を下回り、対象8地域の中で最も低い
- 冬の平均気温は旭川や帯広よりも高い
- 夏の気温の低さが年間の平均気温を下げている
- 他の地域に比べて年較差(最寒月平均気温と最暖月平均気温の差)が小さい
これらの気候的特徴は、釧路の沿岸を流れる「千島海流(親潮)」によるものです。
まずは年較差が小さい点について。夏の砂浜は灼熱地獄ですが、夜になると冷たくなります。一方、波打ち際や海水は1日中冷たいまま。こうした温まりやすく冷めやすい陸地の性質と、温まりにくく冷めにくい海の性質が故、海沿いの地域は内陸部よりも年較差が小さくなるのです。
海沿いで気温が上がりにくいことに加えて、寒流の千島海流(親潮)が気温を下げるため、夏の釧路は涼しくなります。そして、南からの暖かく湿った空気が、冷たい千島海流(親潮)に冷やされて発生するのが霧です。この霧が海から流れ込む影響で、夏の釧路地方は日照時間が短くなります。
■ 参考:日本周辺の海流について
帯広は晴れの日が多い
道内各地の日照時間をまとめた表がこちら。
確かに釧路は夏の日照時間が短いです。一方で、年間を通して見ると釧路と帯広の日照時間が長く、特に2地点ともに冬の日照時間が長くなっています。冬の北海道と言えば白銀の世界が想像されますが、釧路と帯広の冬は晴れの日が多いようです。
こちらは2021年1月1日の朝に帯広駅前で撮影した写真。雲一つない青空が広がり、地面には雪が全くありません。冬型の気圧配置になると、大陸から吹く風に乗って北海道へ雪雲が運ばれてきますが、これらの雪雲は大雪山や日高山脈を越えることが出来ないため、山々の東に位置する帯広や釧路は、いわゆる「十勝晴れ」となるのです。
■ 参考:大陸から吹く風と雪の関係
冬の関東地方も晴れの日が多く、よく晴れた朝は放射冷却の影響で冷え込みが強まります。これは北海道でも同様で、帯広における1月の平均最低気温はなんとー13度です!
発達した低気圧(南岸低気圧)が太平洋を通過すると、関東地方でも雪が降りますが、十勝地方は大雪に見舞われます。帯広で1日に合計102cmの雪が降った記録(1970年3月16日)は今も道内第1位。気温が低いが故、降れば雪になり、さらに降った雪はなかなか解けないのでしょう。
夏は暑く、冬は寒く、雪も多い旭川
帯広と並んで、1月の平均最低気温がー10度を下回っているのが旭川です。
内陸に位置する旭川は8か所の中で年較差が最も大きく、冬は極寒である一方で、8月の平均最高気温が8か所の中で最も高い26.6度にもなります。
雪は10月から4月まで降り、年間の積雪は5m超。これだけ気候的に過酷な場所に都市が形成され、30万人以上が暮らし、北海道第二の都市として君臨しているのは不思議なことです。
■ 参考:旭川開拓の歴史
留萌川が流れる地形の影響で、旭川の西側には標高の高い山々がありません。日本海側から旭川まで運ばれて来た雪雲は大雪山に阻まれ、その結果、旭川に雪雲が溜まるのでしょう。降雪が多くなるメカニズムは新潟県の越後湯沢等と同様です。
雪も雨も多い余市
ただ、余市町は旭川よりも雪が多く、年間の降雪の深さは8mを超えています。
余市町で雪が多くなる理由は「海と山の近さ」。この地図を見ると、余市町は一方を日本海、残る3方を1000m級の山々に囲まれていることが分かります。水分をたっぷり含んだ雲が海から運ばれてきて、これらの山々を越えることが出来ず、余市町に雨や雪をもたらすのです。
年間降水量のデータを見ても、余市町は8か所の中で最も多くなっています。さらに、1月~2月における日照時間は100時間を下回っており、この2か月間は雲が停滞しているような状態なのでしょう。
一方で、5月~6月の降水量は8か所の中で最も少なく、日照時間も長いです。正確なことは不明ですが、この時期の余市が少雨となる理由として、以下のことが考えられます。
- 海から運ばれてくる雲が無い
- 気温が低い
- 3方を山に囲まれているため、陸地からも運ばれて来る雲が無い
曇りの日が多い稚内
最北の町・稚内は8か所の中で最も日照時間が短いです。
余市町と同様、冬の日照時間が短く、特に12月は28.4時間しかありません。ただ、雨や雪が特別多いわけではないので、冬の曇りの日の多さが、日照時間の短さに影響していると考えられます。
稚内の風についてまとめた表がこちら。11月から3月の間は平均して4.7m以上の西風(=大陸から吹く風)が吹いていますが、稚内周辺には標高の高い山が無く、雲が溜まることはないため、雨や雪は少ないのでしょう。冬の沖縄で曇りの日が多いのと同じメカニズムです。
■ 参考:大晦日の宗谷岬の様子
ちなみに、道内8か所の風速を比較するとこの通り。稚内よりも釧路の方が風は強いようです。釧路における年間の最多風向は北北東。確かに、釧路周辺も高い山はありませんが、強い風が吹く理由はよく分かりません。ちなみに、風のデータが出ている釧路周辺の町(白糠・知方学・太田)の年間平均風速は3m前後です。
函館は本州型の気候
気温と降水量・降雪をもとに作成したマトリックス図に各地を当てはめると以下の通り。
この図を見ると、夏の函館は他の地点に比べて気温が高く降水量も多く、冬は気温が高く降雪は少ないことが分かります。津軽海峡があるとはいえ、北海道と本州の最短距離17.5m。これだけ本州と近ければ、函館の気候が本州と変わらないのは当然と言えるでしょう。
■ 参考:北海道・本州最短の地
札幌観光は5月~6月がおすすめ?
本州が梅雨に入る5月から6月にかけて、札幌の日照時間は道内8か所の中で最も長いです。
この時期の平均気温は13度~17度と少々涼しいですが、観光にはおすすめの時期かもしれません。また、「冬の北海道で雪景色が見たい!」という時にも、上のマトリックス図を参考にすると、札幌であれば比較的暖かい中で雪景色を楽しむことが出来そうです。
おすすめの時期は?
さすがは北海道。最初の仮説通り、道内各地で気候が異なることが分かりました。観光地や食事だけでなく、天気もまた旅行の重要な要素。冬の晴れた北海道を楽しみたいなら帯広や釧路、極寒の北海道を体験したい場合は旭川(気温が低く降雪が多い)など、おすすめの時期は目的によって変わります。ぜひ今回ご紹介した内容を参考に、北海道旅行を計画してみてはいかが。
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今回はここまで。本日もありがとうございました。
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